人呼んで「令和の中島みゆき」 400万人号泣させた魂の「ファイト!」 スーツで歌うシンガーの正体

[ 2022年12月8日 08:30 ]

<うぴ子インタビュー>人生の応援歌を歌ううぴ子(撮影・河野 光希)
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 YouTubeで、ある女性シンガーの動画が再生400万回を突破してじわじわと話題となっている。リクルートスーツにギター一本を抱え、中島みゆきの「ファイト!」を熱唱するうぴ子(24)。上京後、現役看護師としてコロナワクチンの打ち手をしながら、新宿の路上で歌い上げた一曲で人生が変わろうとしている。(取材・構成 松井 いつき)

 動画は昨年7月に公開。圧倒的な声量とビブラートに中島みゆきを重ね、魂の叫びのような歌い方に号泣する人が続出した。「令和の中島みゆき」「凄すぎてやばい」「40年来のみゆきさんのファンですが、みゆきさん以外でこれほどまでに琴線に触れる歌声のファイトは初めて聴きました」「みゆきさんが歌ってるみたいでした」「聴いてるだけで涙が出てしまい、感動」「歌詞に経験を重ねて物語にして表現してるというか、だからこそ心に響くんだと感じました」「既に中島みゆきクラスの歌唱力があると感じた」「可愛い外見からアイドルのような可愛い声で優しく歌う感じかと思ったらめっちゃドス効いた迫力ある歌声でびっくり仰天!」などと2000件以上のコメントが寄せられる大反響を呼んでいる。

 スポニチのインタビューに応じたうぴ子は「諦めなかったら、誰かが見てくれるんだっていう気持ちになりました」と素直に喜びを口にした。

 聞いた人の心を揺さぶる歌声には、これまでの強烈な人生経験が投影されている。

 小中学生の頃は「みんなでカラオケに行っても絶対に恥ずかしくて歌えないような子供」だった。高校生になり、SNSにカバー曲を歌ってアップしていたことから「友達に文化祭で歌やればって。初めて弾き語りをみんなの前ですることになって、音楽は楽しいなと思うようになりました」。

 一方で、過酷な体験もしてきた。独特なハスキーボイスは「高校生の時はもっと高い声だったんですけど、学校のストレスで過食症になってしまって。胃酸でのどが荒れてしまってこうなったんです」。SNSでは「誹謗中傷、嫌がらせみたいなのにも遭った」という。当時、女子プロレスラーの木村花さんがテレビ番組出演でSNSで誹謗(ひぼう)中傷された後、22歳の若さでこの世を去った。同じような立場を経験していただけに「すごい衝撃を受けた」といい、やりきれない思いをぶつけた歌「匿名の檻」を発表、SNSで大きな話題となった。

 高校卒業後、「音楽の世界なんて、私より歌がうまい人なんてゴロゴロいる。絶対無理だと。それを夢見るくらいなら、地元で普通に平凡な人生を、と思っていた」と看護師を目指して定時制の看護学校に進学。並行して働いていた医療施設での体験が価値観を180度変えた。「あまりにも衝撃すぎて。昨日まで元気でニコニコ話していた患者さんが次の日に亡くなってしまう。急なことで、追いつけなかったです」と回想する。

 「いろんな話を聞くんですよ。90代の方が多くて。戦争も経験してらっしゃる。死っていうのは誰しも平等に訪れるんだとか、かなり考えさせられました」。今でも忘れられない患者の言葉がある。「戦争に旦那さんが行っていた方で。“今の時代、あなたたちは本当に何でもできるから。自分の納得できる道を選ばないと後悔するよ”って。1週間後に亡くなってしまって、その時の言葉が忘れられなくて。看護師さんは誰かの力になる仕事ですごく素敵だと思うんですけど、自分的に納得できるというか、もしも死んでしまう時に、“いろんなことがあったけど、これで良かったなって思いたいな”って」。人の生死に直面し、人生は短いと痛感。そこから即座に海外渡航を思い立ち、看護師免許を取得して仕事からは離れた。

 しかし、コロナ禍が直撃した。「まさかと思ったけど、ちょっと冷静になって、今しかできないことをしようと。自由だし、海外には行けないけど、いつかこの状況が終わったら行こうと。それまで音楽、歌が好きだったからちょっとやってみようって」と自身での作詞作曲を続けて、オリジナル曲を作っていった。SNSで歌唱シーンを見た東京の音楽事務所からの誘いで、即上京。だが、その事務所を離れることになり「1人だし、自由だと。それで、新宿で路上ライブをしてみようかなって」。立ち止まって聞いてくれるOL、サラリーマン、学生らに向け「上から目線じゃなく、その人と同じ立場に立って歌を届けたい」とリクルートスーツ姿で新宿に乗り込み、1曲限りの「ファイト!」に全てをぶつけた。この瞬間をとらえた動画が配信され、400万回再生を突破した。

 「学生の時にいろんなことがあって、看護師の時も人間関係だったり、すごく重い荷物を背負って生きているような時期があった。その時に『ファイト!』を聞いて励まされたというか、背中をさすってもらっているような気持ちになった」という特別な曲。路上ライブでは「なにくそっていう感情も乗ってたと思うんです。今思えば、音楽がうまくいかないとか、暗闇の中にうずくまってるような感覚で。あの『ファイト!』には、その時のやるせなさと、しんどい気持ちがフルに出て、多分画面上から伝わったのではと思います」。

 人生に無駄な経験などない、と思わせられる。「東京では2年間ぐらい、コロナワクチンの打ち手として医療の最前線にもいたんです。大変でした。毎日、かなりきつくて。間違ってはいけないし、へとへとになっていました。でも今は多少落ちついて、日々を取り戻しつつあるということで、無駄じゃなかったんだなと。シンガーとしてもライブができるようになったので、すごく嬉しいです」と笑顔を見せる。過食症で喉を傷めたことも結果的には独特な歌声になり、看護師の経験も生きている。「結構今は強くなったと思うんですけど、高校生の頃はすごくメンタルが弱いっていうか、思春期だから痩せなきゃとずっと思っていて。でも、それすらも味になってますから。無駄はなかった。看護師という道を選んでよかったとも思いますし。必然だったんだなと」。

 昨年9月には俳優・斎藤工がうぴ子の歌声と歌詞の世界観を絶賛し、斎藤のラジオに出演。注目度は急上昇しており、今年12月11日には初のライブアルバム「LIVE IN TOKYO」を発売。都内でリリースイベントも開催。来年1月には渋谷でワンマンライブも決まった。今後、当面は音楽一本で活動していくという。「令和の中島みゆき」という呼び声には「恐縮ですし、嬉しいです」とはにかみながらも「うぴ子という色を大事にしていきたいなと思います。『ファイト!』は、多分これからもたくさん歌っていくし、『ファイト!』で出会った方もたくさんいるので大事にしていきたい反面、自分の持ち味を大事に歌っていきたい。私の音楽人生はこれからだと思います」。末恐ろしいシンガーが、いよいよ一歩を踏み出す。

 ◇うぴ子 1998年(平成10)6月26日生まれ、山口県出身の24歳。「うぴ子」の名前は、本名からとられたニックネーム「うっぴー」に由来する。

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