「TOKYO MER」脚本・黒岩勉氏“死者1”に込めた思い「記号なんかじゃない とてつもなく重い」

[ 2021年9月12日 05:30 ]

「TOKYO MER」脚本・黒岩勉氏インタビュー(下)

日曜劇場「TOKYO MER~走る緊急救命室~」第10話。茫然自失の喜多見(鈴木亮平)(C)TBS
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 俳優の鈴木亮平(38)が主演を務めるTBS日曜劇場「TOKYO MER~走る緊急救命室~」(日曜後9・00)は12日、15分拡大で最終回(第11話)を迎える。アクション映画のようなスピード感、特撮ドラマのようなヒーロー感が視聴者を魅了。新しい医療ドラマとして初回から反響を呼び続けた。最終回を前に、オリジナル脚本を手掛けた黒岩勉氏が作劇を振り返った。視聴者絶句の衝撃的な展開となった前回第10話(9月5日)の「死者1」に込めた思いを明かした。

 <※以下、ネタバレ有>

 鈴木が同局の看板枠・日曜劇場初主演。コロナ下の医療従事者に勇気を与えるべく、都知事の号令により新設された救命救急のプロフェッショナルによる架空のチーム「TOKYO MER」の奮闘を描く。「MER」は「モバイル・エマージェンシー・ルーム」の略称。チームは最新の医療機器とオペ室を搭載した“動く手術室”専用の大型車両「ERカー」を駆使。事故や災害の現場に急行し、いち早く負傷者に救命処置を施す。

 「待っているだけじゃ、助けられない命がある」――。アクション映画のようなスピード感とスケール感、特撮ドラマのようなヒーロー感とチーム感が視聴者の心をわしづかみに。毎回、極限のオペが行われるスリリングな展開に加え、チーフドクター・喜多見役の鈴木の熱血ぶりや的確な処置、医系技官・音羽役の賀来賢人(32)のツンデレぶりも話題沸騰。第7話(8月15日)&第9話(8月29日)の平均世帯視聴率が15・0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と夏ドラマNo.1のヒット作となった。

 黒岩氏は青山学院大学卒業後、放送作家に。2008年に「フジテレビヤングシナリオ大賞」佳作を受賞し、翌09年「世にも奇妙な物語『自殺者リサイクル法』」で脚本家デビューを果たした。フジ「謎解きはディナーのあとで」「ストロベリーナイト」、TBS「グランメゾン東京」「危険なビーナス」、映画「LIAR GAME」シリーズや「キングダム」(共同脚本)など数々の話題作を執筆。16年4月期のフジ「僕のヤバイ妻」で第5回市川森一脚本賞に輝いた。

 第10話は「最終章 前編」。大学で発生した爆破事件も無事に解決したと思われた矢先、チーフドクター・喜多見幸太(鈴木)の最愛の妹・涼香(佐藤栞里)がテロ組織のメンバー、エリオット・椿(城田優)の爆弾の犠牲になった。「MER」メンバーの懸命の蘇生措置も…。危機管理対策室のメンバー・清川標(工藤美桜)は「今回の出動、死者は1名(喜多見涼香)です…」と報告。「MER」がどんな絶体絶命のピンチでも続けてきた「死者0」が、ついに途切れた。

 視聴者は絶句。SNS上には「ウソだろ」「展開つらすぎ」「残酷すぎる」「耐えられない」「立ち直れない」「涙が止まらない」「音羽先生とすずかちゃんが結婚する未来しか見えていませんでした。放心状態」など、悲しみに暮れる声があふれ返った。

 黒岩氏に最終回のポイント、視聴者へのメッセージを尋ねると「ちょっとだけ真面目な話をしますと」「押しつけがましいメッセージはエンタメの邪魔なので排除したつもりですが」と断りながら、こう答えた。

 「ちょっとだけ真面目な話をしますと、コロナ禍が続いて、毎日発表される感染者数や死者数がまるで記号のようになっているように感じます。でも、一人の死者には家族や友人や大切に思ってくれていた人たちが大勢いて、それは数字や記号なんかじゃなくて、とてつもなく重いもののはずです。そして、そういう現実を医療従事者の方々は背負って今日も頑張ってくれているのだと思います。だからこそ『MER』では『死者0』の有難さと『死者1』の重みをしっかりと表現したいなと思いました。そのとてつもない重さを背負ってでも再び立ち上がって、新たな命を救おうとするヒーローのお話を描きたいなと考えました。押しつけがましいメッセージはエンタメの邪魔なので排除したつもりですが、最終回まで観てくれた方が、純粋にドラマを楽しんで、最後に何かを感じてくれたのなら、これ以上幸せなことはありません」

 <おわり>

 【最終回あらすじ】最愛の妹・涼香(佐藤栞里)を亡くし、失意のどん底にいる喜多見(鈴木)はMER脱退を告げ、都知事の赤塚(石田ゆり子)は意識不明のまま。音羽(賀来)も大物政治家・天沼(桂文珍)に動きを封じられ、ついにMER解散が決定してしまう。そんな中、エリオット・椿(城田優)による連続爆破テロで東京中が炎上。多くの負傷者が出るが、喜多見も音羽も出動せず。ERカーの使用も禁じられ、MERメンバーは最大のピンチを迎えた。しかし、その時、それぞれの心を震わせる「言葉」が響いた――。タイトルは「伝説に消えた勇者たち…MER最後の戦い」。

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