藤井王位 天敵・豊島竜王を鮮やか逆転、タイに 劣勢中盤から跳ね返した

[ 2021年7月15日 05:30 ]

王位戦第2局で豊島将之2冠(手前右)に勝ち感想戦で対局を振り返る藤井聡太王位
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 将棋の第62期王位戦7番勝負第2局は14日、北海道旭川市の花月会館で第2日を行い、防衛を目指す藤井聡太王位(18)=棋聖との2冠=が苦闘の中盤から粘り強い指し回しで形勢を逆転し、102手で豊島将之竜王(31)=叡王との2冠=を下した。これでシリーズ成績は1勝1敗のタイ。過去1勝7敗と苦手にしていた相手に中身の濃い白星を挙げ、第3局(21、22日=兵庫県神戸市)以降に弾みをつけた。

 翔タイムならぬ「聡タイム」。ロッキー山脈を望むかの地に負けじと、大雪山連峰を仰ぎ見る旭川では藤井のワンマンショーが展開された。

 もはや「天敵」ともいうべき豊島相手に13日の第1日から苦戦を強いられる。封じ手の時点で「すでに苦しいと思っていました」と苦笑いの藤井。先手の豊島が選択した角換わり早繰り銀に対し、同じ戦術をぶつけながら、交換した角を盤上に投じた1手で窮屈な形に追い込まれる。「角が中途半端で、厳しいかなと」。わずかに見せた脇の甘さを見逃す相手ではない。じわじわと劣勢となり、もはやなすすべが尽き果てた感もあった。

 黙っていれば敗戦へ一歩一歩近づくだけ。消費時間も倍以上の差がついた。開き直るしかない。不利を承知で攻め込みを開始。豊島を斬り合いへと誘う。「(自分の)駒が少ないので攻め合いでも依然苦しいか」と自覚しながらも攻め手を継続。選択肢を数多く相手に与えて迷わせる「藤井ワールド」大全開。攻勢を保てば勝利につながるはずの豊島が受けに回った瞬間、逆転への扉が開いた。「勝負できるところが出てきた」。最後は華麗な即詰みだ。

 12日の移動日は空路で直接現地入りではなく、札幌から旭川まで函館本線の特急を利用した。鉄道ファンを公言するだけに「景色を眺めながらリラックスできました」と明かす。約1時間半の旅で「鉄分」を十分に吸収したのも劇勝の要因だったのだろう。

 札幌で行われた昨年の王位戦第2局も逆転勝ちし、そのままの勢いで史上最年少2冠に輝いた。「タイに戻すことができたので、また第3局は気持ちを新たに、精いっぱい戦いたい」。18歳最後の対局を見事に飾ったこの1勝の意味は果てしなく大きい。

 《勝負メシ、一般にも期間限定販売》第2日の昼食は藤井が「海鮮丼」、豊島が「豚しゃぶときつねうどんセット」をそれぞれ注文した。老舗料亭として有名な対局場の花月会館では、第1日に両者が選んだ「蒸し鶏の葱(ねぎ)塩ソースがけ」や2日間のおやつを含めたメニューを、20~25日の期間限定で一般販売することが決まっている。

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