「おかえりモネ」第8週サブタイトル「それでも海は」に込めた思い りょーちん&新次が期せずして同じ言葉

[ 2021年7月9日 08:20 ]

連続テレビ小説「おかえりモネ」第39話。最愛の妻・美波の声が残された携帯電話を強く握り締める新次(浅野忠信)(C)NHK
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 女優の清原果耶(19)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は9日、第40話が放送され、第8週「それでも海は」が完結。ヒロイン・百音の幼なじみ・亮(永瀬廉)と父・新次(浅野忠信)、及川家の喪失感と再起を紡ぎ上げた。前半最大のヤマ場となった週を演出した桑野智宏監督にサブタイトルに込めた思いや東日本大震災を描く思いを聞いた。

 朝ドラ通算104作目。清原とタッグを組んだNHK「透明なゆりかご」やテレビ東京「きのう何食べた?」などで知られる安達奈緒子氏が手掛けるオリジナル作品。朝ドラ脚本初挑戦となった。タイトルにある「モネ」は主人公・永浦百音(ももね)の愛称。1995年に宮城県気仙沼市に生まれ、森の町・登米(とめ)で青春を送るヒロイン・百音が気象予報士の資格を取得し、上京。積み重ねた経験や身につけた技術を生かし、故郷の役に立ちたいと奮闘する姿を描く。

 第8週は、百音が気仙沼の実家に帰省した2015~16年の年末年始から、震災前の10年4月に時が戻る。亮の母で新次の妻・美波(坂井真紀)の在りし日。百音の父・耕治(内野聖陽)、新次、美波が幼なじみだったこともあり、永浦家と及川家は固い絆で結ばれていた。

 しかし、銀行員の耕治が資金繰りをサポートし、新しく造った新次の船は被災。11年10月、耕治は新次に「とにかく、おまえ船を買え。買うために船乗って、金を稼げ」「船、持てよ、もう一度。おまえには船が似合うよ」と勧めたが、融資は通らず。親友の間には溝が生まれ、新次は立ち直るきっかけをつかめずにいる。

 16年1月、姿が見えなくなり「海に落ちたかもしれない」と心配された新次は、かつて自宅があった場所で酔いつぶれていたところを無事発見。ひとまず永浦家に連れられてきた新次は耕治や亜哉子(鈴木京香)、龍己(藤竜也)の前で長い間抱えてきた、どうにもならない苦しさを打ち明けた。

 「5年って長いですか。おまえ、まだそんな状態かよって、あっちこっちで言われるんですよ。でもオレ、何でか、もうずーっとドン底で。オレ何も変わらねぇ。いや、そういう中でね、うれしいことがあったんです。昨日、病院から帰ったら、連絡があってね。船に乗っている亮からメカジキ50本揚げたって。もうそれがすんげぇいい声で。明日港に戻るから、親父、見に来てよって。何だ、ガキじゃあるまいしって思ったけど、その、言っていることガキなのに、その声がもう子どもじゃなかったのが、オレ物凄くうれしくて。もしかしたらオレに似て、筋がいいんじゃないかなって思って…。それをしゃべる相手が…話す相手がいないんだ。ホントだったら一杯飲みながら、一緒に親バカだなって、言い合える美波がいないから…。それで気付いたら、家があったとこ戻ってた。ホントに毎回迷惑掛けて、ごめんな、耕治。もう本当にごめんな」

 亮は父を心配し、永浦家に駆けつけていた。縁側で父の思いを知り、茶の間に上がると、泣きながら母が大好きだった曲「かもめはかもめ」を歌い、父の携帯電話を叩き壊そうとする。新次は「歌なんかやめろよ、おまえ。オレは歌なんかで誤魔化されねぇからよ。オレは立ち直らねぇよ。絶対に立ち直らねぇ!」と取り返した携帯を強く握り締めた。

 翌日、亮は幼なじみたちとボードゲームをしながら将来のことを語り始め「オレらは親たちとは違うからさ。オレは親父とは違うから。過去に縛られたまんまで何になるよ。ここから先の未来まで、壊されてたまるかっつーの。オレらはオレらの好き勝手やって生きてく。音楽だ何だって家の仕事捨てたっていいし。地元好きなら地元盛り上げるのもいいし。大学行かずにさっさとやりたい仕事に就くのもいい。勢いで東京行ったっていい。急に苦手な勉強始めたっていい。オレらが、前を向くしかないんだ」と決意を新たに。「海に恨みはないから」――。父子は期せずして同じ言葉で百音に思いを告げた。

 週のサブタイトルは安達氏と制作陣で決める今作。第8週の「それでも海は」は桑野監督が提案したものが採用された。

 「新次さんとりょーちんの台詞『海に恨みはないから』は、気仙沼で取材していた時に聞いた言葉です。震災があっても、それでも海はそこにあるし、それでも海と共に生きていくことには変わりはない。気仙沼は海から獲れたものを生業にする方が多い地域ですし、そこには、前向きな思いだけではなく、生きるために必要な決意があるのではないかと受け止めていました。そのような理由から、このサブタイトルを考えました」

 第39話(7月8日)序盤、かつて自宅があった場所に座り込み、携帯電話に残された美波の声を聞く新次を背中から横顔と収めるカメラワーク、第40話(7月9日)終盤、百音を見送り、けあらしを見つめる新次の背中などが印象的。

 チーフ演出の一木正恵監督も第5話(5月21日)の移流霧のシーンについて「美しい霧を見つめながら、百音が胸の奥にしまっていた心情を訥々と語り、朝岡(西島秀俊)たちが耳を傾ける大事なシーン。清原さんと西島さんを真正面から撮ると、2人と霧の間にカメラが介在することになるので、それは慎重に考えないといけません。もちろんプロの役者さんはカメラがどこにあろうと集中して演じることができますが、今回は2人が目の当たりにしている物(霧)をカメラで遮らず、その空間を収めたいと思いました。キャストに一番いい演技をしてもらうには、どういう撮り方がいいのか。当然、前からも撮るんですが、このシーンは横や後ろからのアングルを特に大切にしました。カメラが演技者の前に入ることへの恐れを意識したチームでありたいと思っています」と語っていた。

 13年前期の朝ドラ「あまちゃん」も演出した桑野監督は「ヒロインの天野アキ(のん)が震災後、岩手に帰った週(第24週)を撮らせてもらった時もそうでしたが、いくら役者さんとはいえ、大きなものを背負って生の感情が動いている人に対して、正面に入ってカメラをドンと突きつけることはできないんです。もちろん正面から撮る必要がある時もあるんですが、やはり生の感情を寄り添おうと思うと、自然とカメラが演者さんの横や後ろに回っていくんです」と明かした。

 SNS上には「りょーちんの言葉、心に刺さるよ」「いろんな進路があったっていい。りょーちん、泣けるよー。素敵だよ」「りょーちん、やっと本音を話せた…泣」「涙止まらん!凄い名言、よく言ったよ」「永瀬廉=役者さんだった。今日の演技、一番好きかも。朝から涙止まらん」「海に恨みはないから。泣ける」「海に恨みはない、その一言で新次もりょーちんも決して後ろばかり見てるわけじゃないって分かる」「一見すると、前向きになれない父と、なろうとする息子だけど、海に恨みはないと同じことを言う。深いところでつながっている親子なんだね。一番印象に残る週になりました」「今週は浅野忠信が大優勝。及川親子でスピンオフ来ないかな」「春は悲しいだけの季節じゃないよね。最後の(竹下景子の)語りに涙腺崩壊した」などの声が相次いだ。

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2021年7月9日のニュース