ブル中野 ファン必見の新たなリング 「弱いところも隠さず話す」

[ 2021年5月27日 08:20 ]

YouTubeチャンネル「ぶるちゃんねる」で活躍するブル中野
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 【牧 元一の孤人焦点】元プロレスラーでタレントのブル中野(53)が今春、YouTubeチャンネル「ぶるちゃんねる」を開設し、胸に刺さる話を聞かせている。

 リモートでインタビューに応じたブルは「YouTubeはテレビより話しやすいので、前々から自分に合っていると思っていました。ただ、自分がやったことに対する答えが数字に出ちゃうので大変です」と話した。

 現在、チャンネル登録者数は2万7000人以上。4月1日のスタートから順調に数字を伸ばしており、5月21日に公開したプロレスラー・蝶野正洋(57)との対談は早くも視聴回数が10万回を超えた。

 繰り広げるプロレス話は具体的で奥深い。昭和の時代からのオールドファンにはたまらない内容だ。

 「昔だったら、こんな話はできなかったと思います。以前は、分かっていても触れない時代でした。今は、プロレスをエンターテインメントとして見てくれるお客さんが増えて来ました。みなさんが、昔は話せなかった部分を聞きたいのは分かります」

 ブル中野が女子プロの枠を超えて人気を得た発端は、1990年のアジャ・コングとの金網デスマッチ。試合の終盤、金網の最上部まで登り切り、約4メートルの高さから、リングに横たわるアジャにギロチンドロップを食らわした。一歩間違えれば、自分自身が生命の危機に陥る壮絶なフィニッシュは、のちにファンの間で伝説となった。

 「あれで死んでもいいと思いました。試合前、眠れない日が続いていたんですが、あれを思いついて、ようやく眠れるようになったんです。死をかけて戦わないと、お客さんが認めてくれないと思いました。相手がアジャじゃなければ、もっと簡単に勝っても良かったかもしれない。でも、相手がアジャだから、あれじゃないとダメだと思ったんです。私が恵まれているのは、そう思わせてくれるライバルが現れたこと。アジャがいなければ、私の強さはなかったです」

 93年からは米国に長期遠征。翌94年11月にWWF(現・WWE)の女子王座に就いた。当時、国内の反響は大きくなかったが、振り返ってみれば、今から25年以上前に日本人女性が米国の女子プロレスのトップとして戦っていたのは特筆すべきことだ。

 「正直、試合は日本にいた時の方がハードでした。生活する環境や移動など、試合以外のことが大変で、試合が唯一、ストレスを解消する場所みたいな感じでした。日本にいた時はビジネスでやっている意識がなかったんです。本当に好きでやっていました。少しビジネスを意識するようになったのは米国に行ってからです。でも、ビジネスだと割り切ってやっていたら、つまらなかったと思います。『きょうの試合で死んでもいい』という気持ちでできたのは、仕事だと思っていなかったからです」

 これほど強い思いを抱いたプロレスラーはそうざらにはいない。そんな人が話すからこそ、新たなリングの「ぶるちゃんねる」が面白いのだろう。

 「話すのは自信がないんです。プロレスをやっていた時も、話を大きくしたり面白おかしくしたりすることができませんでした。今、心掛けているのは、自分の弱いところも、恥ずかしいけれど、隠さずに話すことです」

 針小棒大とは無縁なところ、実直なところに魅力の源がある。ファン必見の動画の公開が続く。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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2021年5月27日のニュース