じっと耐えたAKB、歩を進めた坂道…2020コロナ禍での女性アイドルシーンを振り返る

[ 2021年1月2日 09:00 ]

秋葉原にあるAKB48劇場
Photo By スポニチ

 新型コロナウイルスの感染拡大で、世界には様々な生活やスタイルの変化、制約が生まれた。アイドル界も例外ではない。ファンとの距離感、露出スタイルなど、新しい生活様式に、女性アイドルたちはどう立ち向かったのか?AKB48グループ、坂道グループの昨年一年を振り返りつつ、今後も続く“withコロナ”時代のアイドル界を占った。

 女性アイドルグループ界のトップを長年、走り続けたAKB48グループは、コロナによって最も打撃を受けたアイドルと言っても過言ではない。「会いに行けるアイドル」を旗印に、全国各地で行う大規模な握手会でファンと直接、交流するのが週末のルーティン。そんな日常が崩されたのが、国内にもコロナ感染者が広がり、自粛ムードが広がった2月だった。握手会の延期、中止が発表。ほどなくして、各グループの専用劇場での公演も当面、中止されることが決まった。

 未知なるウイルスとの戦い。今は消毒、飛沫(まつ)感染の警戒、3密の回避など、予防策を徹底しながら、石橋をたたいて渡るしかない。しばらくは動画サイトを使った「おうち劇場公演」などを開催。緊急事態宣言が明けた6月には、ようやく少しずつ劇場公演を再開させた。通常16人出演のところ5、6人での少数での開催、無観客での配信のみだった。感染者数の波が落ち着くとともに、出演者数や有観客での公演を増やしたが、歓声やコールは禁止。爆発的な熱気、臨場感が戻る日は見えない。

 握手会はエア握手会動画の配信、9月からは握手会を「オンラインお話し会」に替えて、ファンと間接的ながらコミュニケーションを取る機会を設けた。SKE48は、会場でメンバーとファンが距離を取った状態で、動画ツールを使って対話するイベントも実施。各グループが可能な限り手段を尽くした。

 大規模なコンサートも軒並み中止、延期になった。中でも不運だったのは峯岸みなみで、4月に控えた卒業コンサートが延期された。卒業発表をした昨年12月から、卒業までの禁酒を宣言したが、卒業自体が延期になったことで、酒断ちも続行。つい先日、禁酒1周年を迎えた。今年中に卒業予定だったSKE48松井珠理奈、高柳明音も延期となっている。

 最後に発売されたAKB48のシングルは、5月の「失恋、ありがとう」。それから9カ月間、リリースが止まっており、06年のCDデビュー以来、最長のブランクとなっている。リリースとそれにともなう数々の握手会イベント開催は、AKB48にとって生命線。それでもシングルを出さなかったこと、峯岸らの卒業コンサートも延期し続けていることは、ある意味「会いに行けるアイドル」の矜持(きょうじ)を保ったようにも思える。一方で、少し離れた場所からは「止まった1年」に見えたのは事実。12年ぶりに「NHK紅白歌合戦」出場を逃したことは、それと無関係ではないだろう。

 対照的に、乃木坂46をはじめとする坂道グループは、コロナ禍でも積極的に時を進める道を選んだ。乃木坂46は、本来5月に東京ドームで予定していた“絶対エース”白石麻衣の卒業コンサートを中止。10月に配信限定で開催した。もちろん、白石にとっても、ファンにとっても、直接お別れの機会が欲しかったはず。それでも、有料配信で見届けたファンは推定68万7000人に上り、一部で接続が困難になる時間帯も。白石の影響力の大きさを示した。

 1月にセンター平手友梨奈が脱退する激震に見舞われた欅坂46も、その歩みを止めることはなかった。9月には櫻坂46への改名を発表。東京・渋谷の街頭ビジョンでサプライズ発表するという、話題性あふれるものだった。10月には欅坂46としての最後のライブを開催。こちらも無観客での配信だった。今月は早くも新グループ名でシングル「Nobody's fault」を発売。2期生の森田ひかるをセンターに抜てきし、イメージを一変させた。

 日向坂46も全国ツアーが延期されたものの、今年のクリスマスイブに「ひなクリ2020~おばけホテルと22人のサンタクロース」を配信で開催した。本来、12月に予定していた東京ドーム公演を1年後に延期することを発表。夢の実現へ、1年がかりでストーリーを見せていく手法を取った。深夜のバラエティー番組「日向坂で会いましょう」で、オードリーに鍛えられたバラエティーセンスで、佐々木久美や加藤史帆らが次々と地上波バラエティー番組へと進出。ゲームが大好きな丹生明里が「有吉ぃぃeeeee!」で、影山優佳がサッカー番組「FOOT×BRAIN」などで存在感を発揮するなど、趣味や個性を生かした活動も目立つようになった。

 嵐が去るのをじっと待ったAKB48グループと、向かい風にも歩みを緩めなかった坂道グループ。結果的には明暗が分かれたようにも見えるが、どちらにも我慢の一年だったことは事実だ。“withコロナ”時代で、握手会に代わる新たな交流プラットフォームは誕生するのか?そして、ファンにどんな新しい楽しみを提供するのか?こんな世の中だからこそ、時代は大きく動く…そう期待したい。

続きを表示

この記事のフォト

2021年1月2日のニュース