将棋の冨田誠也新四段 24歳の野望は“藤井くんと同じ”「勝率7割」 立命大出身初の棋士

[ 2020年11月10日 05:30 ]

 プロ棋士を指す四段に先月昇段した将棋の冨田誠也四段(24)が20日、デビュー戦となる叡王戦四段戦で服部慎一郎四段(21)との対局に臨む。冨田は立命大出身初の棋士。12月12日には関西若手棋士らが立ち上げたユニット「西遊棋」によるオンラインイベントで2、3年ぶりという目隠し将棋にも挑戦する。「プロになったことでより近い距離感でファンの方と接することができる。面白い将棋が指せたら」と意気込み、初のサイン会にも意欲を見せている。

 女流王将のタイトル獲得歴がある香川愛生女流三段(27)や北村桂香女流初段(24)ら女流棋士に立命大OGは多いが棋士は初めて。入学時には棋士養成機関の奨励会所属だったため、大学の将棋部に所属しながらアマチュアの公式戦には出場できなかった。ただ、部員との練習将棋は数知れず。2013年4月、三段に昇段後、半年に2人ずつ四段昇段できる三段リーグを15回目で卒業できたきっかけには、部員との対局があった。

 立命大将棋部は学生日本一にも輝く名門。コロナ禍で大会の中止が相次いだ5月、冨田らOBも加わり1チーム5人で4チームが総当たりする団体戦をオンラインで実施した。

 プロの卵でいわば格上の冨田だったが3連敗。3月まで半年間にわたって戦った前回三段リーグを6勝12敗で終えた直後だったこともあり「情けなかった。“終わった”と思いました」と落ち込んだ。

 6月から新たに開幕するリーグを前に「心を入れ替えた」。すると14勝4敗の好成績。「自分は追い込んだら伸びるタイプと思っていたら逆でした。ノビノビ指すべきでした」。リーグ最終局に勝って四段昇段を決め、師匠の小林健二九段(63)に電話連絡すると涙があふれ出た。

 満26歳となるリーグの終了までに四段になれなければ基本的に退会。その鉄の掟(おきて)を前に、自ら退会しての就職を考え、ネットで性格診断を受けたり友人から公務員試験の問題集をもらったりしたことも頭をよぎった。プロでの目標を「年間勝率7割。そこを目指したい」。近年では実質初年度の17年度、藤井聡太2冠が61勝12敗で勝率・836を残した例がある。将棋が指せる未来を手に入れた喜びに、満ちあふれていた。

 ◆冨田 誠也(とみた・せいや)1996年(平8)2月13日生まれ、兵庫県三田市出身の24歳。小林健二九段門下。立命大経営学部卒。得意戦法は四間飛車。

 《大卒増加傾向》棋士に学歴は不要として中学卒業と同時に将棋一本で打ち込む者が多かったが、近年は大学までの進学組が増加傾向にある。東大出身の片上大輔七段や阪大大学院の糸谷哲郎八段。多いのが早大で、丸山忠久九段、北浜健介八段、広瀬章人八段、中村太地七段らがいる。豊島将之竜王は関大第一高から関大へ進学したが中退した。

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