NHK大河名場面SP 織田信長のイメージ作った「国盗り物語」

[ 2020年6月19日 20:05 ]

NHK大河ドラマ「国盗り物語」で織田信長を演じる高橋英樹(左)と明智光秀を演じる近藤正臣(右)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】小学生の頃に見たNHK大河ドラマで、今でも忘れられないのが「国盗り物語」(1973年)だ。主人公は斎藤道三(平幹二朗さん)と織田信長(高橋英樹)。信長がやたらと明智光秀(近藤正臣)に厳しく当たる場面を覚えている。子供心に、これでは本能寺の変も無理はないと思ったものだ。

 多感な頃に得たイメージは強い。その後、大河や別の作品でいろんな信長を見てきたが、やはり、信長と言えば「国盗り物語」の高橋英樹。放送から50年近くたった今でも、誰かが信長を演じると比較してしまう癖が直らない。

 「麒麟がくる」の一時休止に伴い、特別番組「戦国大河ドラマ名場面スペシャル」(日曜後8・00)が始まったが、21日の放送で、この「国盗り物語」が取り上げられる。

 番組担当者は「国盗り物語」について「史実をもとにしているので、信長と光秀の間にどのように確執が生まれ、本能寺の変で何が起きるか、結末は知っている。それでもなお、ハラハラドキドキして目が離せない緊張感にあふれている」と強調する。

 この作品には帰蝶役で松坂慶子、豊臣秀吉役で火野正平、徳川家康役で寺尾聰らが出演。番組担当者は「当時、重要な役どころに若手俳優が多く起用されたことでも話題になった。今、大御所として活躍する方々の、みずみずしい演技が魅力」と話す。

 高橋が演じた信長について「撮影当時29歳だった高橋さんは『自分は信長の生まれ変わりだ』と思えるほど役柄がぴったりきたという。乗りに乗った演技は、まさに信長。強く、りりしく、でも妻の前ではちょっと弱気を見せることもある」と指摘。近藤の光秀に関しては「愛妻家で子煩悩で『人々の喜びの声を聞きたい』と願っていた。近藤さんは自分がサラリーマンだと思って演じていたそうだ。この人こそはと見込んだ上司・信長との間に次第に確執や疑念が生まれていく」と語る。

 現在の大河「麒麟がくる」で信長を演じているのは染谷将太、光秀は長谷川博己。特に信長は育った環境に由来する人間の弱さが意識的に描かれていて、これまでにない人物像として話題になっている。

 染谷の好演で私は新しい信長にシンパシーを抱き始めてきた。しかし、本能寺の変はまだまだ先だ。高橋の信長のイメージが完全に消え去るかどうか…。最終回を見終わった後でないと何とも言えない。

 ◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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