「いだてん」第39話は“全編”美濃部孝蔵 森山未來「壮大な伏線回収 凄い」満州で「富久」大きな到達点

[ 2019年10月13日 12:30 ]

大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」で若き日の古今亭志ん生、美濃部孝蔵を熱演している森山未來(C)NHK
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 NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(日曜後8・00)は13日、第39話「懐かしの満州」が放送される。俳優の森山未來(35)が熱演してきた若き日の古今亭志ん生、美濃部孝蔵の物語が満州でクライマックスを迎える。森山に話を聞いた。

 歌舞伎俳優の中村勘九郎(37)と俳優の阿部サダヲ(49)がダブル主演を務める大河ドラマ58作目。2013年前期の連続テレビ小説「あまちゃん」で社会現象を巻き起こした脚本家の宮藤官九郎氏(49)が大河脚本に初挑戦し、オリジナル作品を手掛ける。20年の東京五輪を控え、テーマは「“東京”と“オリンピック”」。日本が五輪に初参加した1912年のストックホルム大会から64年の東京五輪まで、日本の激動の半世紀を描く。

 「昭和の大名人」と呼ばれる落語家・古今亭志ん生(1890~1973)は物語のナビゲート役。ビートたけし(72)が志ん生、森山が若き日の志ん生・孝蔵を演じた。

 第39話は、脳出血を起こして倒れた志ん生(ビートたけし)は一命を取り留め、弟子の五りん(神木隆之介)に、戦争中に満州へ兵士たちの慰問興行に行った時のことを語りだす。三遊亭圓生(中村七之助)と共に満州を巡っていた孝蔵(森山未來)は、金栗四三(勘九郎)の弟子・小松勝(仲野太賀)と出会っていた。やがて終戦。孝蔵の妻・おりん(夏帆)は帰国しない夫の無事を占ってもらおうと、日本橋のバー「ローズ」を訪ねるが、そこに田畑(阿部)が現れる。

 ――第39話の台本について。

 「それまでドラマの中に細く長くというか、飛び道具的にポンポン入らせていただいていたのが、いきなりほぼ全編が志ん生・孝蔵のシーンになっていて、単純に驚きました。ここまでの話の中でバラまかれていた壮大な伏線の回収がここで行われるというのは、凄いなと思います。よくできている本だなと」

 ――中村七之助が演じる圓生の印象について。

 「圓生さんは凄く芸に対してストイックで色気のある人だったということなので、七之助さんにピッタリだと思います。もちろん噺家なので落語をやるんですけれど、“艶のある女性をどうやるのか”という皆さんの期待に噺の部分で応えてくれると思うので、僕も楽しみにしています」

 ――志ん生(孝蔵)にとって満州はどういう場所か。

 「どこにいても、この人のキャラクターは変わることはないんだろうなと思いつつ、いろんな人や文献によると、戦争以降、志ん生さんの芸が良い意味で変わったそうです。満州を経て芸が凄く変わったということは、絶対にここで壮絶なことが起こったんだと思うんですけれど、あんまり志ん生さん自身が語っていないんですよね。芸事はなんでもそうですが、噺家はある程度のところまでは技術を鍛錬できるけれど、その先はその人の人生みたいなものが表現に表れると(落語指導の古今亭)菊之丞師匠がおっしゃっていて。満州が大きなターニングポイントになるのであれば、やはりここで何かが確立されなければいけないんですよね。やぶれかぶれな芸風だと言われている志ん生さんだけれど、満州で自分の人生を決定づける何かが生まれてしまう。それまではフラフラしていて飲む・打つ・買う…まあそれは今後も続くのかもしれないですけれど、ここで根っこに重たいものがズシッと下りるのかなと。師匠の円喬さんのようなかっちり緻密な芸風に憧れて、でも、あまりに人間が危うすぎるから、そうはできなかった。勝手な妄想ですけれど、満州で『生きてるだけで丸儲け』というか、『これでいいじゃねぇか』っていう良い意味での開き直りみたいなものが生まれるのかなと思います」

 ――満州で「富久」を演じるシーンについて。

 「また無茶ぶりですよね(笑)。小松勝の伏線回収が主で、そこに志ん生の『富久』が乗っかっている。でも、その『富久』で僕は孝蔵として何か大きな到達点を迎えなきゃいけないんですけれど、そこに至るまでの孝蔵の心境の変化はそこまで描写されていなくて。『何とかせえよ、おまえ』感がすごいです(笑)(酔った状態で披露した初高座の)第13話の『富久』はやぶれかぶれで良かったですけれど、今回はそういうわけにはいかない。あそこが始まりだから。あそこからの成長というか到達点を、うまく見せられたらいいなと思います」

 第39話の演出を担当した大根仁監督は「見どころはやはり、志ん生(孝蔵)・圓生・勝、すなわち森山未來・中村七之助・仲野太賀の初共演とは思えぬ、俳優としてすべての相性がマッチした演技…いや、僕は途中から演技とは思えませんでした。僕はもともと、男同士のいわゆる“バディもの”が大好きなのですが、男女の関係性とは違う、役者同士の間に独特の色気が漂うんですよね。圓生の『居残り佐平次』から志ん生の『富久』、そして勝が取ったある行動という流れは、もともとの宮藤さんの脚本も見事だったのですが、役者・演出・スタッフの『脚本を超える!!』という思いが一つになったシーンだと思います」と手応えを示している。

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