「いだてん」塚本晋也“うねり”の中でつかんだ副島道正の役柄「肖像画のように溶け込んでいった」

[ 2019年10月6日 08:00 ]

大河ドラマ「いだてん」に出演中の塚本晋也(C)NHK
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 NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(日曜後8・00)に出演中の映画監督で俳優の塚本晋也(59)。日本人4人目のIOC委員となった副島道正を好演している。「ほぼノープラン」の状態で臨んだという今作だが、主演の阿部サダヲ(49)や嘉納治五郎役の役所広司(63)との共演、撮影現場の熱気によって変化。「“うねり”の中で役をつかんでいった」と熱演を振り返った。

 ――副島道正という人物について。

 副島さんのことは、このドラマで初めて知りました。ケンブリッジ大学を卒業し、帰国後入省(当時の宮内省)したという大変博学な方。また、家柄的にも伯爵家という地位。知性と品位を併せ持ち、西洋の文化、語学にも精通する国際的なセンスを見込まれてIOC委員となった人のようです。

 副島さんについて残されている資料も少しですが読ませていただきました。体は弱くても、かくしゃく(矍鑠)としてブレない人だったのではないかという印象です。そういうところは脚本にも活かされているようでした。また、副島さんの父は旧佐賀藩士から明治政府に登用された人物だとうかがっています。江戸時代の武士の名残と、明治維新の気風みたいなものを受け継いでいる人だとも想像しました。ですから、ムッソリーニに「サムライ」と声を掛けられるのも、にじみでる気迫が副島の中にあったのではと思います。

 ――役について、どのようにとらえ、演じたか?

 ひ弱なようで信念の人。最初はどう演じようか、ほぼノープランでした(笑)。脚本を読んだ最初の印象として、どちらかというとクールな人柄で、周囲とは一定の距離を取りながらもオリンピック招致の熱狂の渦に取り込まれていく感じなのかなと思いました。
 でも今回は撮影現場で信頼できる監督さんたちの言葉を聞き漏らさないようにしながら、その期待に応えようと演技をしていくうちに、副島の役どころが徐々に分かっていったところも多いです。ムッソリーニと談判するシーンでは、副島には「しぼり出すような強さがほしい」とも言われました。そんな風に、撮影現場の熱い“うねり”の中で役をつかんでいった気がします。

 ――演じていて難しい点などは?また脚本の印象は?

 副島は英語やフランス語で話す場面も多いので、現場では緊張しっぱなしでした。でも、念願の宮藤官九郎さんの作品に出演できたので、とてもうれしいです。「あまちゃん」もとっても楽しませてもらいましたので。出演させていただいて分かったのですが、宮藤さんの脚本はそれぞれのキャラクターが立っていて、その人たちが複雑にからみ合って物語を加速度的に楽しくしていく魅力がある。だからこそ演じる側は全員ワクワクしますし、それぞれが生き生きと演技することができるのだと思います。

 ――そして冷静な印象の副島が嘉納治五郎と田畑政治に染められていく部分も?

 何事にも動じないはずの副島が2人のある意味で熱狂的なオリンピック招致への思いにだんだん取り込まれて行くんですよね。すごいですよね、この2人(笑)。また、演じられている役所広司さんと阿部サダヲさんが素晴らしい。2人の演技をこんなに間近で見られてワクワクしました。

 ――役所さん、阿部さんの印象は?

 役所さんはこれまでごあいさつ程度の面識しかなく、この作品でお会いしたのがほぼ初対面です。共演させていただくのがとても楽しみでした。素晴らしい存在感と素晴らしい演技。人間国宝のような方だと思っています。副島としては正面を向いていなくてはいけない場面でも、横にいる役所さんの演技をどうしても見てみたくて困りました。

 また、阿部さんも素敵な方。阿部さんの田畑にはとても驚きました。あのピカピカなエネルギーというか、大河ドラマの枠にとらわれずアニメのキャラクターのように縦横無尽に駆け回っていて、その破壊力がとても面白いと思いました。僕も初めはギャグを入れつつ演じるつもりでしたが、阿部さんとは対極に、どこか肖像画のように作品に溶け込んでいくようにしていきました。

 ――1940年の東京オリンピック招致について。

 こんな幻の東京オリンピックがあったことを僕は初めて知りました。1964年の東京オリンピックの時、僕は4歳でしたが、そこにたどり着く前に、こんな風にオリンピックと東京が関わり合っていたとは知りませんでした。

 今回の大河ドラマは時代劇というよりも、近現代の、しかも僕らが生まれて完全に記憶があるところまでつながっていくので、そういう時代背景について役柄を通じていろいろと知れたことも大きな意味がありました。出演できて本当によかったです。

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