ハリウッドセクハラ問題余波 アカデミー賞の注目は出席者の衣装の色

[ 2018年1月21日 10:20 ]

第75回ゴールデン・グローブ賞の授賞式(AP)
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 米映画界の祭典、第90回アカデミー賞のノミネートが日本時間23日に発表になる。言葉が話せない女性と極秘研究機関に運び込まれた謎の生物とのロマンスを描く「シェイプ・オブ・ウォーター」や、娘を殺害された母親が巨大な看板に警察を批判する文章を載せ続け再捜査を迫る「スリー・ビルボード」などの秀作が何部門でノミネートされるか楽しみだ。

 今年のアカデミー賞(日本時間3月5日午前)には、もっと注目を集めていることがある。来場する俳優、女優の服装だ。ただ例年のように、どの有名ブランドの高級品か、ということではない。色が問題なのだ。

 今月7日に開催されたアカデミー賞の前哨戦、第75回ゴールデン・グローブ賞の授賞式には、出席者のほぼすべてが黒系の洋服で出席。昨年ハリウッドから始まった「セクハラ問題」の被害女性への連帯を表す意味が込められていた。この流れがアカデミー賞でも続くのか、ということに業界人が注目している。

 最近のアカデミー賞は、黒人が関係する作品のノミネートが少ない、黒人俳優が演技賞でノミネートされないなど、政治色が濃いものになっている。昨年はハリウッドに批判的なトランプ大統領の誕生で、一層政治色が濃くなったと言われている。「司会が政治的なジョークを挟み込むのは定番ではあるのですが、あまりにも政治を連想させるものになると、エンターテインメント界最大の祭典の意味合いが、ちょっと違ってきてしまう」と洋画配給関係者は話す。「特に今年は、超大作ではないが良質で見応えのある映画が多く、作品そのもののにフォーカスが当たってくれないと、日本公開時のプロモーションもやりにくい」という。

 セクハラは犯罪行為なので許されるべきものではないが、話題作を提供している有力プロデューサーや名優と言われる俳優が「セクハラがあった」と告発され、表舞台から遠ざかる動きを心配する映画関係者は少なくない。ある洋画宣伝関係者は「アカデミー賞常連だったケビン・スペイシーがぱったりと消えてしまったのは驚きでした」と話す。

 筆者も最近、スペイシーがブラッド・ピットと共演したサスペンス「セブン」をテレビで見た。劇場を含め10回近く見ているが、あのスペイシーの怪演なくしては、ラストシーンの衝撃はありえなかっただろう。大どんでん返しサスペンス「ユージュアル・サスペクツ」もしかり。決してスペイシーの肩を持つわけではないが。

 最近、ハリウッドのセクハラ告発に疑問を投げかける動きがあった。欧州からだ。フランスの大女優カトリーヌ・ドヌーブ(74)が「魔女狩り」などと批判し、「(男性が)ナンパは性の自由化につながる」という趣旨のコラムを発表。これにかみついた女性に対し「傷ついた被害者の方がいたらおわびします」と謝罪はしたものの、主張自体は取り下げなかった。この動きに、やはりフランスの大女優「BB(ベベ)」ことブリジッド・バルドー(83)が続いた。雑誌のインタビューで「プロデューサーに言い寄って、役を得る女優はたくさんいる」と発言。「男に“いいお尻”なんて言われるのは快感だった」と言ったのだ。

 映画界のレジェンド、ドヌーブとBBの発言は、海を越えてハリウッドに影響を与えるのか。その1発目の答えは、アカデミー賞の女優たちの衣装の色で分かるかもしれない。

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2018年1月21日のニュース