藤井“先生”子供に夢の一手、出身将棋教室生徒倍増、棋譜は最高の教材

[ 2017年12月21日 09:30 ]

瀬戸市内の「ふみもと子供将棋教室」で指導する文本力雄さん(右)
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 自民党が大勝した衆院選や北朝鮮問題の深刻化、天皇陛下の退位決定や眞子さまの婚約内定、世間を揺るがす殺人事件など、2017年も社会は目まぐるしく動いた。今年注目を集めた人物や事象を振り返り、背景やサイドストーリーに迫る。将棋で公式戦29連勝の新記録をマークして旋風を呼んだ中学生棋士の藤井聡太四段(15)。すでに少年少女の“先生”として、夢を与える存在になっている。

 藤井が幼少期に腕を磨いた愛知県瀬戸市の「ふみもと子供将棋教室」。6畳2間の教室の壁には、藤井の活躍を伝える記事が何枚も貼られている。生徒数は約50人になり、昨年12月からの1年でほぼ倍増した。

 席主の文本力雄さん(62)は週3回、小学生らに指導。その方法には、羽生善治竜王(47)を中心とするプロの棋譜を活用した「次の1手問題」がある。文本さんが「▲7六歩、△8四歩…」と符号を読み上げて生徒に各自駒を並べさせ、途中で「ここで先手はどう指す?」などと最善手を予想させる。考える時間はわずか1分ほど。正解を示しては進みを繰り返し、終局後に採点する。

 少年時代の藤井も、トップ棋士の手を指に染み込ませた手法だ。そこに今年、最高の“先生”として教材に加わったのが藤井の棋譜。文本さんは「攻守の急所で出題するけど、聡太は解説者が驚く手を指す。子供たちもうんうん頭をひねりながら考えてます」と目を細める。

 昨年の史上最年少デビューから、今年は公式戦新記録の29連勝、非公式戦でタイトル保持者の羽生や久保利明王将(42)を破るなど、衝撃を与え続けた一年だった。今年度はここまでの公式戦対局数が全棋士最多の53局。中学校生活の合間を縫い、地元愛知の将棋イベントにたびたび出演。子供相手に多面指し指導対局も行った。今月のトークショーでは、女子小学生が「勉強するコツはありますか」と質問。「嫌々やってもはかどらない。楽しむ気持ちを持ってみては」と的確に助言する姿は“藤井先生”の貫禄だった。

 来年4月には高校に進学する。最近、報道陣に今年の漢字を問われ「成」と答えた。数々のプレッシャーを乗り越えた成長の一年。周囲への影響力がどれだけ大きくなっても、本人は強くなることしか頭にないだろう。

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