三宅弘城 主演舞台「鎌塚氏」第4弾 寅さん目指す“名選手に美技はない”

[ 2017年8月7日 12:00 ]

主演舞台「鎌塚氏、腹におさめる」の稽古で汗を流す三宅弘城
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 2015年後期のNHK連続テレビ小説「あさが来た」の亀助役で知られる俳優の三宅弘城(49)が主演を務める舞台の人気シリーズ第4弾「鎌塚氏、腹におさめる」が東京・下北沢の本多劇場で上演中。場内に笑いを巻き起こしている。自身の“初”主演作に「自分で言うのも何ですが、代表作ということになるのかなぁと思います」と誇りを持ちながら「そこにあぐらをかきたくない」。役者を志したことはなかったが、20歳の時の演劇体験を機に、俳優生活は30年。「名選手にファインプレーはない。『あの人、さり気なく、すごいことをやっているな』と言われるような役者でありたい」と理想像を明かした。

 人気劇作家・演出家の倉持裕氏(44)が作・演出を務め、三宅演じる完璧なる執事・鎌塚アカシが“騒動”に巻き込まれるコメディー。2011年5月に第1弾「鎌塚氏、放り投げる」、12年8月に第2弾「鎌塚氏、すくい上げる」、14年7月に第3弾「鎌塚氏、振り下ろす」を上演。第1弾と第3弾はともさかりえ(37)、第2弾は満島ひかり(31)をヒロインに迎え、3年ぶりの第4弾は二階堂ふみ(22)が初参戦。推理小説にのめり込む名家の令嬢・綿小路チタルを演じる。アカシとチタルが屋敷で発生した殺人事件の解決に乗り出す。共演は眞島秀和(40)お笑いトリオ「我が家」の谷田部俊(39)玉置孝匡(45)猫背椿(44)大堀こういち(54)。

 近年、舞台作品のシリーズ4作目が製作されるのは異例。三宅は「何となく第3弾で一区切り、みたいな空気が少なからずあったので、第4弾が決まった時は単純にうれしかったですね。帰ってきたなという感じ」と素直に喜び。「堅物で几帳面。一見、付き合うには難しそうなタイプの人間ですが、どこか抜けていて、かわいらしいところもある。それが共感を呼ぶんじゃないですかね」という魅力的なキャラクターを体現している。

 4回目になっても「尊敬語、謙譲語、丁寧語の言い回しは、いまだに難しいです」。6年前、最初に演じる際、役作りのため「100年前のイギリスの文献を基にした、貴族と使用人の生活を1カ月してみようという、向こうのテレビのリアリティーショーがDVDを見ました。ただ、執事は容姿端麗じゃないといけないというところで、もう、そこが違うっていう。参考にはなりませんでした」と笑い飛ばした。

 2010年10〜12月に上演された劇団☆新感線「鋼鉄番長」。主演の橋本じゅん(53)が腰痛(腰部脊柱管狭窄症)と坐骨神経痛のため途中降板。三宅が見事、代役を務めた。その半年後に「鎌塚氏」シリーズの第1弾。「初めて公式に真ん中に立たせていただいた舞台なので、自分で言うのも何ですが、代表作ということになるのかなぁと思います」と自負。ただ「『オレ、主役だぜ』っていう気持ちは、あまりない。自覚がないということじゃないんですが、そこにあぐらをかきたくないというのもあるし、みんなと一緒に作っていきたいというのもあります」と共同作業を強調した。

 気が早いが、第5弾以降については「執事は年を取っても演じられるのがいいなぁと。執事長としての貫禄も出てくると思いますし。仕えるお嬢様が『寅さん』(映画「男はつらいよ」)のマドンナみたいな感じなので、寅さんみたいになればいいなと思います」と、さらなる長寿化に意欲を示した。

 劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(54)が主宰する人気劇団で、みのすけ(52)犬山イヌコ(51)峯村リエ(53)大倉孝二(43)らが所属する「ナイロン100℃」の前進「劇団健康」に1988年入団。「俳優を目指そうと思ったことは一度もなくて。劇団健康を見て『ここに入りたい』と思ったんです。最初は音楽をやりたかったんですけどね」

 当時、雑誌「宝島」で「夢の遊眠社」(主宰野田秀樹)「第三舞台」(主宰鴻上尚史)などの小劇場カルチャーも紹介されており、劇団健康も知ってはいたが「あまり見る気にはならなかったんです」と苦笑い。それが、演劇好きの友人に誘われ、第5回公演「ホワイトソング〜意味盗り合戦'88〜」(池袋シアターグリーン)を目の当たりにすると衝撃を受けた。

 ナンセンスコメディーを中心に上演した劇団健康は85年に旗揚げされ、当初は大槻ケンヂ(51)、のちに「電気グルーヴ」を組む石野卓球(49)とピエール瀧(50)、田口トモロヲ(59)らも出演していた。「ストーリーはほとんどあってないようなものだったと思うんですが、みのすけさんが暴れまくっていたり、役者さんにも衝撃を受けました。展開の早いコント的なシーンはスピード感があって、パンキッシュに見えたんです。僕はパンクロックが好きだったので『演劇でも、こういうパンクな表現ができるんだ』と思い、それが衝撃でした」

 それから30年。「やっぱり(演技は)追っても追っても、逃げていくみたいなところがあるんじゃないですかね。正解はありませんし。映像の仕事は瞬発的な一発勝負のスリル感。舞台はお客さんと一緒に空気をつくるライブ感。日々違いますし、(体の)少し向きで笑いが変わったりしますし」と芝居に魅了されている。

 NHK大阪放送局制作の朝ドラ「あさが来た」は、三宅演じる加野屋の中番頭・亀助が主人公のスピンオフ「割れ鍋にとじ蓋」が制作されるほどの人気に。本編放送中、亀助が女中・ふゆ(清原果耶)と結婚した際には「大阪の街で『おめでとう』と声を掛けていただいたり。ドラマが視聴者の皆さんの生活の一部になっていることが実感できて、うれしかったです。映像の仕事の代表作だと思います」と振り返った。

 来年1月に50歳。今後については「年相応の役はやらせていただいていますし…もっと偉い人、社長?無理だな」と笑いながら、自然体を強調。「『名選手はケガしない』みたいなことを言うじゃないですか。『名選手にファインプレーはない』みたいなことも。名選手は事前に(異変を)察知しているから、いかにも普通に処理しているように見えますよね。『あの人、さり気なく、すごいことをやっているな』と言われるような役者でありたいです」。今冬にはナイロン100℃ 44th SESSION「ちょっと、まってください」(11月10日〜12月3日、本多劇場)が控える。舞台、テレビ、映画と、どんな役もこなす“名プレイヤー”への歩みは続く。

 ◆「鎌塚氏、腹におさめる」公演日程【東京公演】8月5日(土)〜27日(日)=本多劇場【名古屋公演】8月29日(火)〜30日(水)=日本特殊陶業市民会館ビレッジホール【大阪公演】9月2日(土)〜3日(日)=サンケイホールブリーゼ【島根公演】9月5日(火)=島根県民会館大ホール【広島公演】9月7日(木)=JMSアステールプラザ大ホール【宮城公演】9月13日(水)=電力ホール【富山公演】9月15日(金)=富山県民会館ホール【静岡公演】9月18日(月・祝)=静岡市清水文化会館マリナート大ホール

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