山本英夫 待望の新作は「王道のヒーローもの」 8日発売号から連載

[ 2014年12月8日 05:30 ]

8日発売の週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)表紙

 「殺し屋1」「ホムンクルス」などで知られる人気漫画家・山本英夫氏(46)の待望の新作が、8日発売の週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)でスタートする。「ホムンクルス」終了から4年、満を持して放つ新連載「HIKARI―MAN」は、なんとヒーローものだった。

 君の体に、血は流れているか?

 過激な作風で知られる山本氏。前作から4年が経過し「(作品を書かなかった時間は)今までで一番長い。最近は原作業もやってみたいと思っていたが、描いてほしい描き手さんは、忙しいからすぐには描いてくれなくて・・・。それでは、そろそろ自分でオリジナルを描いてみようかなと。今は絵を描くことが楽しいですね」と明かした。

 そんな充電期間を経て選んだテーマは意外にも「王道のヒーローもの」。光や電気、記号があふれる都会が舞台。意識のかたまりが世界を埋め尽くし、血なまぐさい匂いが消えていく。「人間の中には今…HIKARIが流れ出す!」。読者の心をグッとつかむ序章から、携帯電話やゲーム機に熱中する高校生を主人公とする物語がスタートする。これまでの作品を考えれば、まさに新境地といえるだろう。

 過去には、作品のために探偵学校に入学したり、代々木公園でホームレス生活を送ったり、歌舞伎町にあった友人宅に長期滞在したりした。「30代前半の頃でしょうか、代々木公園にテントを置いていた。朝起きて、彼ら(ホームレス)とどういう会話をするか。僕の何を気にして話しかけてくるのか。とても意外なもので、それが欲しかった」と振り返る。その上で「今回はあまりそういうことはしなかった。年を重ねたことで、持っているものを出して行こうと思った」と説明した。

 幼少期から漫画が好きで、高校卒業後に「島耕作」シリーズで知られる弘兼憲史氏(67)のアシスタントを務めた。家賃1万3000円のアパートを借り、仕事に没頭した。「あまり取材はしなかった」という今回も、高校生や養護教諭に実際に話を聞いた。「弘兼先生は凄く取材をされる方。刺激を受けたので、そういう流れになったのでしょう」と言う。

 これまでの漫画家人生を振り返り「自分の好きなようにやって、編集部のお金を使い(掲載を)待ってもらう。ぜいたくな時間だった。」。旺盛な取材活動や長い休載期間。実績があり、期待されているからこそ許されるものだ。しかし「実績があるからではなく、僕はそのへんがうまいのでしょう。させてくれそうでさせてくれないキャバクラ嬢を見本にしています」と照れ笑いした。

 「対極にあるものが好き。光と影、意識と無意識。今回でいえば血とヒカリ。印象の悪いものを取り上げることが多い」と言い「自分の絵のクセを取りたい。違った雰囲気で描きたい。作品に合った色にするため、大分無理して描きました」と新たなキャラクターづくりにも挑戦した。
 
 特にこだわった点は「単純に作品を面白くすること」だという。満を持して放つ新連載は8日スタート。これを読まずして2014年は終わらない。

 ◆プロフィール  山本 英夫(やまもと・ひでお)…1968年(昭43)年6月23日、埼玉県所沢市生まれ。88年ちばてつや賞ヤング部門期待賞受賞。89年、週刊ヤングサンデー(小学館)にて「SHEEP」でデビュー。代表作「殺し屋1」「ホムンクルス」「のぞき屋」など。

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