中村座 NYが「アメイジング」 勘九郎「父も見守ってくれたはず」

[ 2014年7月9日 05:30 ]

7日、ニューヨーク・リンカーンセンターのローズシアターで行われた、平成中村座「怪談乳房榎」のリハーサル。中村勘九郎(左)と中村七之助

 歌舞伎俳優の中村勘九郎(32)、七之助(31)らが出演する「平成中村座」のニューヨーク公演「怪談乳房榎(かいだんちぶさのえのき)」が7日夜(現地時間)、ローズシアター(ジャズ・アット・リンカーンセンター内)で初日の幕を開けた。一昨年12月に急逝した父、勘三郎さんの遺志を継ぐ「中村屋」の一大イベント。終演後、勘九郎は「きっと父もどこかで見守っていてくれたはず」と感慨深げ。上演は12日まで。

 3度目のニューヨークは驚きの連続で満員1100人の観客を沸かせた。勘九郎の息もつかせぬ三役早替わり。絵師の重信、悪役の三次、下男の正助と瞬時に役が替わっていく。その都度、「アメイジング!」と演劇好きのNYっ子たちの声が場内に漏れた。

 「ブラボー」連発のスタンディングオベーション。割れんばかりの拍手に包まれた勘九郎は、ステージ上で感無量の様子。終演後、楽屋へ戻ると汗を拭うのも忘れ、「感謝しかないですよ。みなさん、楽しんでもらえたようで本当に良かった。まずは、合格点だと思います」と、米国での初の座頭に手応えをつかんだようだ。

 重信の妻、お関で美しい女形を披露した七之助は「カーテンコールは感激しました。チームが一つの方向に向かっていい仕事ができたと思う」と好スタートにホッとした様子。残忍な磯貝浪江で色気のある悪(ワル)に徹した中村獅童(41)は「“世界に歌舞伎を広めたい”との勘三郎さんの考えを僕たちが伝えていく番です」と話した。

 勘三郎さんの父十七代目からのNYへの熱い思いは、これで親子3代にわたって受け継がれることになった。04年、仮設劇場を持ち込んで大成功した最初の公演の初日、勘三郎さんは「親父はこの街が大好きで、いつかここでやりたいって言ってた。親父の夢を僕がかなえたんだね。喜んでくれると思う」とうれしそうに話していた。

 今回の演目「乳房榎」は、生前、十八代目が「次はこれだね」と決めたもの。劇場ロビーには、在りし日の写真も飾られた。勘九郎は「どこかできっと見ていてくれたはず。父の魂は生きていると感じた。これからもその遺志をしっかり継いでいきたい」と力強く話した。勘九郎の長男・七緒八(なおや)くん(3)、次男・哲之(のりゆき)ちゃん(1)とともに初日を見守った勘三郎さんの妻、好江さんは「本当だったら主人が一番出たかったでしょうね。私も孫が一緒なので来ることができました。今日はいい一日になりました」と笑顔をのぞかせた。

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