山田洋次監督、新作「小さいおうち」完成 家族通して人間を見る

[ 2013年10月25日 19:24 ]

 新作映画「小さいおうち」(来年1月公開)を完成させた山田洋次監督が、東京・汐留の共同通信社で講演した。半世紀を超える監督生活を振り返り「家族を通して人間を見ることを忘れてはならない」と語った。

 若いころは黒沢明監督の「七人の侍」に憧れ、「家族映画やホームドラマを『最低』と思っていた」と山田監督。晩年の黒沢監督を訪ねた時に転機が訪れた。「あの黒沢が自宅の書斎で一人、近寄れないほどの集中力で小津安二郎監督の『東京物語』を見ていたんです」。その時の強烈な印象から、自身も小津作品を真剣に見つめ直し、「男はつらいよ」シリーズ終了後の家族映画を深めていった。

 監督修業時代に「松竹の先輩から『やくざ映画でも純愛映画でも、必ず家族関係を入れておけよ。それが錨のように脚本を安定させる』と言われた」と語り、「僕の映画のほぼ全てに家族が描かれていることを思うと、その言葉が教えになっている」としみじみ振り返った。

 家族というテーマは新作にも受け継がれ、「小さいおうち」では、戦中戦後のある家族に生じた恋愛事件の波紋を描いた。若く美しい奥様、時子(松たか子)が青年(吉岡秀隆)との密会に向かうため、着物の帯ひもを口にくわえて締めるシーンに、艶っぽい情念が漂う。山田監督は「最初からイメージがあったわけではない。リハーサルで見た俳優のしぐさから、イマジネーションが膨らんだ」と撮影の一幕を紹介した。

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2013年10月25日のニュース