歌謡曲への愛結実 由紀さおりにスポニチ文化芸術大賞

[ 2012年9月25日 06:00 ]

ステージで熱唱する由紀さおり

第20回スポニチ文化芸術大賞

 さまざまなジャンルで活躍する人・団体、作品をスポニチ本紙が友情と共感を込めて選ぶ「第20回スポニチ文化芸術大賞」の贈賞式が24日、東京都文京区の「東京ドームホテル」で行われた。グランプリに輝いた歌手の由紀さおり(63)はステージで「夜明けのスキャット」などを歌唱。受賞の喜びに思わず涙をこぼした。特別賞を贈られた秋元康氏(54)は「AKB48を見て“努力はすてきなこと”と思ってくれた方々が支えてくれた」と喜びを表した。

 由紀は鮮やかな着物姿で登場。袖を通したのは、6月に東日本大震災の震災遺児を支援するチャリティー公演以来2度目。「きょうは私にとってあの時と同じように意味のある場だから」と思いを口にした。受賞後のステージはドレス姿で「ブルー・ライト・ヨコハマ」「夕月」など4曲を日本語で歌った。

 昨年9月、ロンドンにある音楽の殿堂「ロイヤル・アルバート・ホール」のステージを翌月に控え、都内の貸しスタジオで連日稽古に励んだ。世界的楽団「ピンク・マルティーニ」との共演アルバム「1969」の発売にあたり企画されたもので「どう歌うのか先方から明確な答えがなかったから、どんな要求が来てもいいように一生懸命稽古していた」という。「あれからちょうど1年。今では夢のようです。このような華やかな場に立てていることが不思議」と笑みを浮かべた。

 同公演の成功をスポニチが報じたのをきっかけに歌謡曲での海外挑戦が広く伝わり、国内では41年ぶりにオリコンチャートトップ10入り。アルバムは世界30カ国で発売され、ヒットした。

 ピンク・マルティーニとの出会いもさることながら、由紀の執念ともいえる“歌謡曲への愛”が快挙につながった。ちょうど3年前の9月、デビュー40周年にあたり、姉の歌手安田祥子(71)に「心残りのないように」と言われ、吹っ切れた。

 「21世紀の歌謡曲を探す」という目標を立て、静かに突き進んできたのである。この時の記念公演のタイトルは「いきる-今日からはじまる夢-」だった。

 「誰も振り向いてくれなかった中、諦めずについてきてくれた皆さんに感謝しています。そしていつもそばでアドバイスしてくれる先生である、姉に感謝したい」と涙を見せた。そして、受賞の花束を最愛の姉にプレゼントし、しっかりと抱き合った。J-POP、ロック、ヒップホップなどがもてはやされてきた中、童謡と歌謡曲をどこまでも愛してやまない強い意志こそが世界への扉を開く原動力になったのだろう。

 ◆由紀 さおり(ゆき・さおり、本名安田章子=やすだ・あきこ)1948年(昭23)11月13日、群馬県桐生市生まれの63歳。幼いころから姉・安田祥子とともに童謡歌手として活躍。69年のソロ曲「夜明けのスキャット」ヒット後、ドラマやバラエティー番組などに数多く出演。85年ごろから、祥子と童謡コンサートを再開。

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