[ 2010年11月27日 06:00 ]

巧みなオーケストラ・コントロールに定評のシャルル・デュトワ

 戦争レクイエムはブリテンの代表作のひとつで、第2次世界大戦の犠牲者への鎮魂ともに戦争の悲惨さ、無意味さを強く訴えかける異色作。作曲は1960年代初め、大編成と小編成の2組のオーケストラ、3人の独唱歌手、混声4部合唱と児童合唱からなる演奏時間90分余を要する大曲だ。この曲のように大編成を要し複雑なテクスチュアを持つ作品はオーケストラ・コントロールに定評があるデュトワが最も得意とするところ。彼は恐らくリハーサルで和声の細部にまでこだわり、綿密な調整を施すものと見られる。デュトワの音楽監督時代の演奏は今でも多くのファンや専門家から強力な支持を集めている。それはキッチリ整えられた和声をベースにした精度の高いアンサンブルによって、作品の本質がクリアに描き出されていたからにほかならない。音楽監督退任後の客演でもそうした特質は維持されているだけにデュトワ指揮、N響の公演は筆者としては確信をもってお勧めできるもののひとつといえよう。戦争レクイエムは難易度の高い作品だが、反戦を訴えるブリテンの叫びが聞こえてくるような本質に肉薄した音楽が期待される。

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2010年11月27日のニュース