[ 2010年10月9日 06:00 ]

NHK交響楽団の定期公演

 ミラノ・スカラ座やローマ歌劇場をはじめイタリア各地の名門歌劇場でキャリアを積んできたサンティは誰もが認めるオペラの職人。ヴェルディやプッチーニの作品のほとんどを隅々まで暗譜し、歌唱パートはむろんのことオーケストラの内声部であっても自在に諳んじることができるそうだ。例えばリハーサルで木管楽器の2番、3番、つまりメロディーを吹いていないパートの奏者が間違ったりしてもスコア(総譜)を見ることなく即座に歌って訂正。時にはサンティが自ら楽器を手に“模範演奏”を披露してみせることもあるという。

 そんな職人のようなサンティ指揮によるイタリア・オペラは、かの国の伝統に根ざした情熱と歌心にあふれたものだ。07年の定期公演ではプッチーニの「ラ・ボエーム」をやはり演奏会形式で取り上げているが、N響からイタリアの歌劇場のオーケストラのような明るく柔らかな響きと流麗なメロディー・ラインを導き出し、演奏会形式であることを忘れさせてくれるほどのオペラ的な音空間を作り上げてみせた。

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2010年10月9日のニュース