[ 2010年10月9日 06:00 ]

今春、「東京・春・音楽祭」における「パルジファル」の公演。N響は高水準の演奏で各方面から好評価を集めた。(C)青柳 聡
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「アイーダ」は、サンティにとって十八番といえる作品でイタリア以外でもニューヨーク・メトロポリタン歌劇場などで何度も手掛け、数々の公演を大成功に導いてきた。ヴェルディ後期の傑作であり、ワーグナーの影響もあってか、従来のイタリア・オペラの枠組みからの飛躍を目指してオーケストラにも重要な役割が与えられているのが特徴。第2幕の「凱旋の場面」をはじめ歌唱とオーケストラが一体となった聴かせどころが満載だ。キャストは実娘のアドリアーナ・マルフィージがタイトルロールを務めるのをはじめ、派手さはないもののサンティが信頼を寄せる実力派が名前を連ねている。演技や舞台装置がないのは確かに残念だが、こと音楽面に関しては、日本のオーケストラから“本物のヴェルディ・サウンド”が聴けるまたとない機会になる可能性が大といえよう。

 前述したようにここ10年におけるサンティとN響の関係は特別なもの。毎回、客演するにあたりサンティは、一定のコンセプトをもって臨んでいることにも注目しておきたい。A・B・Cの3パターンのプログラムのうち、ひとつは「アイーダ」のようなイタリアもの。そしてベートーヴェンやモーツァルトの古典派作品を軸としたプログラム、残るひとつはブラームスやチャイコフスキーなどロマン派の作品を柱にした構成と、まるで音楽監督のような姿勢でN響と相対しているのだ。今年もまったく同じスタイルを踏襲しており、サンティのこのオーケストラに対する思い入れのほどが窺える。一方のオーケストラの側もこの指揮者に厚い信頼を寄せており、これまでもNHK音楽祭やNHK大阪ホールの?落としなど、重要な公演でタクトを委ねている。

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2010年10月9日のニュース