[ 2010年5月23日 06:00 ]

終演後、盛んな喝采を受けるシルマーをはじめとする出演者たち(C)青柳 聡

ワーグナーは作品に込めた自分自身の苦痛や苦悩を観客・聴衆に受け入れてもらうことで、彼自身が癒されたいとの欲求があったのではないだろうか。「ニーベルングの指環」における人間そのものに対する深い洞察やそれらへ皮肉を込めたテーストから一転、痛々しいまでの彼の本音が垣間見えるような気がしてなりません。もちろん私には、それらを完全に受容するだけの人生経験や鑑賞歴もありません。これからひとつひとつワーグナーの作品を探訪しながら、またいつか「パルジファル」に戻って来たいと考えています。嬉しいことに「東京・春・音楽祭」では彼の楽劇やオペラを毎年1作ずつ演奏会形式で上演していく計画です。オーケストラはもちろんN響。そして来年はアンドリス・ネルソンス指揮による歌劇「ローエングリン」が上演されます。バイロイト音楽祭で今年お披露目される「ローエングリン」の新プロダクション(演出ハンス・ノイエンフェルス)で指揮を任されたバルト3国・ラトヴィア出身の若手。さらに病気降板した小澤征爾に代わって今秋のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演の指揮者(メーンはエサ=ペッカ・サロネン)にも抜てきされた俊英として日本国内での注目度も急上昇。期待は大いに膨らみます。

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2010年5月23日のニュース