[ 2010年5月23日 06:00 ]

ワーグナーの演奏経験が豊富なシルマーは深い洞察をベースにした音楽作りを披露(C)青柳 聡

 指揮者のウルフ・シルマーはパルジファルについて「彼が救い主となり、人々を癒すことができるためには、その苦しみを本当に理解できなければなりません。パルジファルは最初、何も知らない“無垢な愚者”として登場します。殺生することの罪深さを知らないため、白鳥を撃って殺し、聖杯騎士たちを驚かせるわけです。しかし彼は、徐々に真の人間、あるいは聖なる存在へと成長していきます」(東京・春・音楽祭HPより)と語っています。その言葉通り主人公の成長と変化を感じさせてくれる掘り下げた解釈による音楽作りで5時間を超えるこの大作を飽きさせることなく聴かせてくれました。

こうしたシルマーの棒を支えたのがNHK交響楽団は緻密なアンサンブルです。祈り、聖杯、クリングゾルの魔法…等々、各場面の情景を変化に富んだ深みのある表現で描き出していました。そして何よりも重心の低いN響のサウンドは、ワーグナーの作品にとても合っているように感じました。

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2010年5月23日のニュース