期待されなかったのに…多彩な持ち味を生かして30億円超

[ 2009年2月23日 14:51 ]

 米アカデミー賞で最優秀外国語映画賞に選ばれた滝田洋二郎監督の「おくりびと」は「死」をテーマに掲げた異色の作品。関係者の深い関心と多彩な持ち味を生かして栄冠をつかんだ。

 公開前、地味な題材の「おくりびと」の興行はあまり期待されていなかった。ところがこれまでに興行収入が30億円を超える予想外のヒット作に。モントリオール世界映画祭でグランプリを受賞するなど海外でも高い評価を受けた。
 ヒットの第一の理由は作品づくりへの純粋さ。そのキーパーソンが主演の本木雅弘だ。
 十数年前にインドを旅した際、死者を見送る儀式を目にして生と死が隣り合う死生観を体感。その後、遺体をひつぎに納める「納棺」の世界を知り「神秘的かつ映画的」と映画化の構想を長く温めていた。旧知の中沢敏明プロデューサーに構想を打ち明け、企画が進み出した。
 映画では、心を込めて死者に接する美しい所作で生命の尊厳を表現した本木だけでなく、山崎努や余貴美子ら力量のある俳優が演じた市井の人々の姿が共感を呼んだ。さらに滝田監督ならではのユーモアや、放送作家として活躍する小山薫堂氏の脚本による時代性が加わって、文化の違いを超えた作品が完成した。

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2009年2月23日のニュース