家族も祝福!幸四郎「勧進帳」1000回

[ 2008年10月16日 06:00 ]

東大寺で「勧進帳」の弁慶役1000回を達成した松本幸四郎

 歌舞伎俳優の松本幸四郎(66)が15日、奈良県の東大寺で「勧進帳」の弁慶役1000回を達成した。国宝で世界最大の木造建築「大仏殿」前での熱演。歌舞伎では珍しいカーテンコールも行い「(長男の)市川染五郎ら若手に弁慶を手渡す日まで修業を続けたい」と、5000人の観客を前に、さらに上演回数を重ねることを誓った。

 「高麗屋!」の掛け声が飛び交う中、幸四郎は飛び六方で花道から退場。大仏殿前のステージを照らす照明が消えると、観客5000人から割れんばかりの拍手が巻き起こった。
 再び花道が明るくなり、幸四郎が笑顔で登場し深々と一礼。「歌舞伎では本来はやらないんですが…」と照れながら異例のカーテンコールだ。祝福の花束を手に「大仏様から“人に感動を与えるというなかなかできないことを仕事にしているのだから、なお一層励むように”という声が聞こえてきました」とあいさつ。「後継者の(長男の)市川染五郎ら若手に弁慶を手渡す日まで修業を続けたい」と、祖父の七代目幸四郎が記録した“弁慶1700回”を目標に、今後も演じることを誓った。
 その染五郎は弁慶と対じする富樫左衛門で同じ舞台に立った。陰で支えた紀子夫人(62)、愛娘の松本紀保(37)松たか子(31)、2人の孫(染五郎の子供)も客席から見守った。
 この日の公演は、大看板の晴れの舞台にふさわしい初めて尽くし。東大寺1300年の歴史で歌舞伎が上演されるのも初の試みなら、観客5000人は史上最多。仮設の花道は21メートルで、歌舞伎座の18メートルを上回る長さだ。さらに舞台の両サイドには、人気歌手のコンサートのように2基の大型モニターも設置された。終演後、幸四郎は「奇跡のような、夢のような1日だった」と振り返った。
 前日の大雨がうそのように、古都の夜空には満月が顔をだした。「上演中、大仏殿越しに月が見えました。大仏様とも何度が目が合いました」。自然の恵みと国宝に囲まれて打ち立てた金字塔。九代目幸四郎の表情は、さわやかな秋のように澄み切っていた。

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2008年10月16日のニュース