【大学スポーツ】早稲田スポーツ新聞会

早稲田大学【春季リーグ戦開幕前特集】 第9回 柳澤一輝

[ 2017年4月6日 05:32 ]

柳澤は先発転向へ意気込みを見せる(C)早稲田スポーツ新聞会
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 中継ぎとして大車輪の活躍を見せた昨季から一転、4年生となったことしは先発として名乗りを上げた。うなる速球にポーカーフェース。その気迫ある投球で、神宮の真っさらなマウンドに立つ日が目前へと迫ってきている。開幕を控えた今、剛腕・柳澤一輝(スポ4=広島・広陵)は真剣なまなざしで前を向く。

 ※この取材は3月30日に行われたものです。

 ◎開幕へ向けて

 ――ここまでの沖縄キャンプや実戦登板を振り返ってみていかがですか
 今年から先発の方に回って、長いイニングを投げれる体力というか、バテない体づくりができてきてるのかなと。それが良かった点でしょうか。

 ――投げていて、実感としてあると
 はい。そうですね。

 ――沖縄での社会人チームとの対戦では直球が芯で打たれ、連打を浴びる場面がありました。社会人との対戦で感じたことはありますか
 配球もそうですけど、一つボールが中に入ると、芯で捉える力は社会人の方が断然あるので(打たれてしまう)。コントロールを少し誤るだけで、自分に負担が掛かってくるというか、追い込んでしまうので。そのへん(制球の誤りで球が中に入る)は、もっとしっかり避けていきたいと思います。

 ――これまで野手陣については、攻守の面からどう見えていますか
 自分の登板のとき、守備では野手はそんなにミスもなく、よく守ってくれていると思います。まあ、バッティングはちょっと課題があるというか。抑えていても打ってもらえない、というのは・・・感じますね。

 ――今年から正捕手が新しく岸本朋也選手(スポ3=大阪・関大北陽)となりましたが、組んでみていかがですか
 練習のピッチングとかでも、うまく(球を)受けてもらったりコミュニケーションをとっていて、実戦の試合中でもコミュニケーションを取っているので。しっかりコミュニケーション取りながら組み立て方を相談して抑えにいく、という意味では、息は合ってきているのかなと。

 ――投手陣全体を見て、調子などはどう感じますか
 ここ最近は負けが続いていて。ちょっとピッチャーが崩れる場面が多く見えているので。抑えてるピッチャーもいますけど、仕上がってるというよりは、まだ少し課題の残るピッチャーが多いのかなとは思います。

 ――ご自身の調子は徐々に上がってきていると伺いましたが、東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)開幕が迫っている今、状態はベストな方向に向かっていますか
 ベストな方向には一応、行っていますけど。まだ課題の部分はあることにはあるので。それをリーグ戦までに直しておければとは思います。

 ――具体的に課題というのは、より精密な制球などでしょうか
 そうですね。コントロールであったり、早いカウントで勝負できるようなボール、ですね。

 ◎自身の役割を見つめる

 ――先発で投げるために準備してきたとのことですが、具体的には
 こっち(大学)の練習ではそんなに変わったことはしてないんですけど、社会人の練習に行かせてもらった時に、ピッチングフォームを見てもらいました。体の使い方であったり、投げる時の力の入れるポイントであったりを社会人との練習でいろいろ学んで、それを持ち帰って実行してやってきてるので。それがいい方向に向いてきているのかなと。

 ――フォームは具体的にどう変わったのでしょうか
 上半身自体はそこまで変わってないと思うんですけど、下半身の使い方ですかね。下半身自体を主動にして、上半身にそれを伝えるというのをできてきてるのかなと思います。

 ――先発するための精神面も強化してきたということですが、マウンドでの心の持ちようなどはいかにあるべきだと考えていますか
 ピンチでオドオドしたりマイナスな感情を顔に出したりとか。そういうのが相手に悟られると、余計それに付け込まれて振ってこないと思うので。そこで(弱気な)表情を出さないように、その中でもしっかり気持ちは相手バッターに向かっていけるように。強気なピッチングと言われるようなものをしていけているのかな。中継ぎでピンチの場面で出ることが多かったので、逆にそれがプラスにはなってきているのかなと思います。先発でも。

 ――中継ぎのメンタルが先発でも生かされているということですね
 そうですね。

 ――先発であれば体力の他にゲームメーク能力も必要かと思われますが、現在手応えは
 テンポを速くして守りからリズムをつくるというので、守り終わってベンチ帰った時とかにも野手に「この回どうだった?」「守りやすかった?守りにくかった?」というようなのを聞きながらやってはいます。リーグ戦に入ってからでも、もっと意識してリズムを守備からつくれるようにしていきたいとは思っています。

 ――先発は立ち上がりに独特の難しさがあると思いますが、どう感じますか。また、苦手であればどのような意識で最初の回に挑んでいますか
 自分の場合は結構立ち上がりに打たれるというか、ここ最近ではストライク自体をあまり取れてはいないので。その辺は中継ぎとは違って、(調子を)つくりながら(やる必要がある)。試合に入るまでのつくり、試合中でのブルペンでのつくり、というのは一切違うので。今は試合もあまり先発で投げてる数が少なく、その辺にはまだ慣れがないですね。それはなるべく早く修正して、しっかり初回からベストな状態でいければチームの流れにもなりますし、自分自身の調子も良くなってくるとは思います。その辺のやりかたはもっと数をやって慣れていかないといけないなと。

 ――これから模索していくということですね
 そうですね。

 ――中継ぎとは違い、同じ打者と何回も対戦することになります。2巡目や3巡目を考えた投球の組み立てが重要になってくると思いますが
 試合前や練習のピッチングのときから岸本と組んでピッチング練習をやるんですけど、そのときからバッターを想定しながら、「1巡目はこういう配球。2巡目からそれを生かして、次はこれを使っていきます」という会話はできてきているので。できているぶん、もっと生かせるようにやっていきたいなとは思っています。

 ――大柄な体格ながら軽快なフィールディングなど、身のこなしが軽やかに見えるのですが、体のキレを出すための練習もされているのでしょうか
 基本的に長い距離を走るというよりは、瞬発系の距離とか、反復系とかジャンプ系をやっています。短い中で一気に力を出せる練習ですね。そのなかでフィールディングであったら投げ終わった一歩目とか、ベースカバーの一歩目とか。なるべく飛んだ打球の方向などを意識しながらやれてはいるので。基本的に長距離や中距離というよりは短距離で一歩目からトップスピードを出す練習をしていってはいますね。

 ――バント練習やフィールディングの練習では、投手陣を引っ張ったり、後輩を指導する姿もよく見られます。最上級生として意識をしている、あるいは性格的に引っ張っていくタイプなのですか
 いや、性格ではないです(笑)。4年生になったから、というわけでも特にないんですけど。みんなにうまくなってほしいし、後輩も聞いてくることは聞いてくるので。その時に自分の考え方とか意見を伝えるようにはしますし、「俺はこうしてるから、こういうのしてみたら」っていう提案ですね。後輩が成長していけたらなとは思っているので。自ら言うときもありますけど、自分からというよりは、後輩が慕ってくれてる、か分からないですけど(笑)。いろいろ聞いてくれてるので。だから恩返しじゃないですけど、しっかり成長してほしいなと。

 ――降板してからも、ベンチからグラウンドの仲間を鼓舞する姿があります。投げ終わった後の自分の役割とはどのようにお考えですか
 投げて終わり、というわけじゃなく、試合はそのまま続いていくので。その中で試合に出れない以上、声などベンチワークでしっかり貢献しないと、いい雰囲気にはならないと思いますし。それが自分のできるベストと思っているので。そういった意味では今やれいてるぶん、もっとそれを浸透させていければいいかなと思っています。

 ――沖縄ではチェンジアップ系の精度に納得されてないようでしたが、現在は
 今はだいぶ修正できて安定はしてきているので、問題はないのかなと思います。

 ――速球へのこだわりがありますが、「スピードでは負けたくない」というような気持ちはありますか
 スピードに関してはもっと伸ばしていきたいとはずっと思っています。周囲に負けないように、というよりは、自分自身と戦ってるというイメージの方があるのかなと。

 ――速球を生かすためには変化球の使い方も重要になってきますが、投球の組み立てにはどのようなものがあるのでしょうか
 軸はストレートですけど、その中でキャッチャーと相手の裏をかきながら変化球を投げますね。バッターがストレートに張って打席に入ってくると思うので、それをストレートのタイミングで変化球を振らせて、空振りでカウントを稼ぐような配球をしています。ベストは軸であるストレートで三振を取れる、そんな配球を考えながらやってはいます。

 ――ストレートが自分の強さであるからこそ、相手との駆け引きをするということですね
 そうですね。

 ――「1試合目を投げて、3試合目も勝つのがエース」とおっしゃっていましたが、開幕を前にして自分が勝っているイメージはできていますか
 その辺は五分五分という感じですかね。決めるのは監督(高橋広、昭52教卒=愛媛・西条)や投手コーチ(脇健太朗、社4=早稲田佐賀)。自分は今オープン戦などで結果を出さないと、その立ち位置には立てないと思うので。今やるべきことをしっかりやって結果を出すことが、自分の中では一番大事なのかなとは思ってます。

 ◎一番大事なシーズンになる

 ――目標のプロ入りに向けても大事なシーズンとなります
 この春が一番スカウトへのアピールにもなります。自分自身の大学生活の成果というか、一番大事なシーズンになるので、そこで自分のベストを持っていかないと何も始まりません。それまでにできることはしっかりとやって、悔いのないようにしたいなと思ってます。

 ――このチームは投手への期待が大きいかと思います。春季リーグ戦ではどのようにその声に応えていきたいですか
 ピッチャーがゼロに抑えないことにはたぶん勝てないと思うので、今のチーム状況では。ピッチャーに負担がかかってくるとは思うんですけど、投手陣でまとまって、しっかり一つの試合で勝ちを取りにいけたらいいかなと思います。

 ――やはり目指すは第一先発ですか
 そうですね。

 ――この春の具体的な目標はありますか
 最優秀防御率。また、先発で最低5勝はしないといけないと思っているので、それをできる投手になりたいなと。

 ――チームとしての意気込みを最後にお願いします
 去年の春も秋も悔しい思いをして、今年自分たちが最上級生になって。まだ順位自体がどうなるかは分からないですが、優勝を目指して、野手も投手もチーム全体でまとまって1試合1試合勝っていけるように頑張っていきたいなと思っています。

 ――ありがとうございました!(取材・編集 早稲田スポーツ新聞会・廣田妃蘭)

 ◆柳澤一輝(やなぎさわ・かずき)1995(平7)年8月3日生まれ。180センチ。82キロ。広島・広陵高出身。スポーツ科学部4年。投手。右投右打。3つ上で高校と大学の先輩である有原航平選手(平27スポ卒=現北海道日本ハムファイターズ)が日本ハムの開幕投手に内定したことを受け、「すごいの一言」と柳澤選手。当時大学ナンバーワン投手と呼ばれた偉大な先輩に追いつき追い越せるように、また同じプロの世界で戦えることを目標に、春季リーグ戦に挑みます。

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