西武・水上由伸 ボールボーイからの“再出発”「やっぱり1軍で投げなきゃ面白くない」

[ 2023年7月9日 08:00 ]

<オ・西> 6回に2番手で登板した水上 (撮影・須田 麻祐子)
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 夏の熱気に包まれた4日のZOZOマリン。ナインが球場入りすると、明るい声が三塁ベンチ前で響き渡った。声の主は西武の水上由伸投手(24)。再調整を経て3カ月ぶりの1軍に帰って来た。

 「やっぱり1軍で投げなきゃ面白くないと思いましたね。去年はずっと1軍。それが当たり前になっていた。大勢のファンの前で野球ができる喜び、楽しさが改めてわかった」とスタンドを見渡す。

 8日オリックス戦の6回に復帰登板。最速は148キロをマークし、宗を見逃し三振に斬るなど3人斬り。右拳を強く握りしめた。拍手を受けて、マウンドを降りる。プロとしての意義を改めて感じた瞬間だ。「アドレナリンとかも出たし、球も良かった。今は信頼はゼロだと思うので、また勝ちパターンで投げさせてもらえるように頑張ります」。表情には自信がみなぎった。

 今季の登板は開幕直後のわずか2試合。直球が140キロ前後と状態が上がらず、無失点ながら捉えられていた。「シンプルに打たれていたので、ボールがキレていなかったのかな」。4月10日に出場選手登録を抹消。ファームでは肩のコンディション不良も重なり、3軍からの再スタート。3軍戦は試合補助員がいない。登板機会がない時は、ベンチ横に座って小学生以来のボールボールもやった。もちろん、トランペットの応援もなければ、大歓声も演出もない。育成時代の日々を味わいながらも、必死にもがいた。

 昨年は60試合に登板して4勝4敗、31ホールド、1セーブで防御率は1・77。パ・リーグでは育成出身初の新人王に加え、最優秀中継ぎ投手に輝く活躍。しかし、過去は見ていない。「新人王はもう過去の栄光。雑用からやりましたよ」と笑っておどけたが、1軍の舞台が輝いて見えていた。ファームでは試行錯誤の日々。自身を「感覚派」という水上。「去年と全く一緒のフォームは無理なので。自分にハマるものがあればと、日々考えながらやっていました」。不振の原因を探り、感覚に合うフォームを何種類も試した。「もう100%。キレも戻ってきているし、しっかり投げられる。しびれる場面で任せてもららいたい」と頼もしい。

 救援陣は2日のソフトバンク戦で全4投手が失点。前カードのロッテでは、2度のサヨナラ負けと夏場で疲れが見え始めている。「8回の男」を担ったきた佐藤隼は再調整のため、抹消中。チームが最下位に沈む中、背番号69への期待は大きい。「うるさいやつが帰って来たので少しは元気になるんじゃないですか。ブルペンを盛り上げていくのも役目なので」。投球で、声で、笑顔で、チームの風向きを変えていく。(記者コラム・福井 亮太)

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