レンジャーズ傘下2Aのアスレチック・トレーナー滝澤氏の願い「ATCという職業を知ってほしい」

[ 2022年9月18日 08:30 ]

レンジャーズ傘下2Aフリスコのアスレチック・トレーナー滝澤祐一氏(本人提供)
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 大リーグのレンジャーズ傘下2Aフリスコ・ラフライダーズで研鑽(けんさん)を積む日本人がいる。アスレチック・トレーナー(ATC)の滝澤祐一氏(37)。「日本では認知度が低いですが、アスレチック・トレーナーという職業を知ってほしいです」と願っている。

 日本でアスレチック・トレーナーの認知度は徐々に高まっているが、滝澤氏は「言葉自体にまだなじみがないです」という。事実、日本のプロ野球でも雇用は数球団にとどまっている。

 米国におけるアスレチック・トレーナーは「医療関連従事職」として、(1)応急処置、(2)障害の評価、(3)リハビリ、(4)障害予防、を担当する。医師らと緊密な連係をとり「ケガ人が出た場合、プレー続行できるか、できないかを判断して、その流れをつくるのがアスレチック・トレーナーの仕事です。アスレチック・トレーナーはメディカル・トレーナーの部類なので医師とともに働いている感覚です」と滝澤氏。プロに限らず中学、高校、大学の部活でも学校側がアスレチック・トレーナーを雇用し、今や企業、病院などに職場が広がっている。

 ケガをしていない選手にも携わるため、筋力や競技力向上を目指すパフォーマンス・コーチ、ストレングス・コーチ、マッサージ・セラピストの役目もこなす「何でも屋」(滝澤氏)。2Aフリスコで若手有望株の選手たちとともにメジャー昇格を目指す滝澤氏の場合は、さらに仕事の範囲が広がり「ここではちょっとしたことでも大ごとになります。肩肘の張りがあるなどだけでなく、少し風邪っぽい、寝不足となれば、なぜそうなったのかを突き止め、上(メジャー)とやり取りしなければなりません。明日、メジャーでプレーするかもしれないので」と語る。

 アスレチック・トレーナーを目指したきっかけは2歳年下の弟・知輝さんだった。横浜スタジアムで行われた夏の神奈川大会準決勝のマウンドで登板中の知輝さんが足をつるアクシデントに見舞われたが、ベンチでは水分補給以外、ほとんど何も処置が行われず、そのままチームも敗れた。滝澤氏は「何か手助けができる職業があるんじゃないか」と、法大卒業後に一念発起して海を渡り、南アーカンソー大学で資格を取得。米球界で8軍相当にあたるルーキーリーグから自ら道を切り開いてきた。

 9月18日(日本時間19日)のレギュラーシーズン終了2日前の16日に2Aフリスコはプレーオフ進出を決めた。滝澤氏の戦いはまだまだ終わらない。「ゆくゆくは日本代表チームに携わって世界一に少しでも貢献できれば最高ですね」。夢はメジャー昇格、そして侍ジャパンとともに世界一。アスレチック・トレーナーの認知度を上げる絶好の機会にもなりそうだ。(記者コラム・柳原 直之)

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2022年9月18日のニュース