トミー・ジョン手術で今季絶望の阪神・高橋「万全の状態にするために手術決断」 矢野監督も「仕方ない」

[ 2022年4月27日 05:30 ]

トミー・ジョン手術を受けた阪神・高橋遥人
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 阪神は26日、高橋遥人投手(26)が左肘内側側副靱帯(じんたい)再建術(通称トミー・ジョン手術)を終え、25日に退院したと発表した。リハビリに1年以上の期間を要するため、今季中の復帰は絶望的となった。「もう一度マウンドに戻ってきて、ファンの皆さんの前で投げることができるように」――。エース級の実力を持ちながら、入団以来、度重なる故障に泣かされ続けてきた左腕が、大きな決断を下した。 

 苦戦が続く猛虎にとって弱り目にたたり目の事態と言えた。故障さえなければエース級の働きが見込める高橋が今季、マウンドに立つ可能性が事実上、消えた。手術を終えた左腕は球団を通じて発したコメントに、無念さと決意をにじませた。

 「肘の状態が悪く、不安を取り除いて万全の状態にするために手術することを決断しました。チームが必死に戦っている中、力になることができず申し訳ない気持ちでいっぱいです。もう一度マウンドに戻ってきて、チームの力になれるように、ファンのみなさんの前で投げることができるように、これからリハビリを頑張っていきます」

 ひとたびマウンドに上がれば、圧倒的な投球で勝利をたぐり寄せる実力を誇る。だが、その潜在能力とは裏腹に、入団から常に故障と隣り合わせのプロ生活を過ごしてきた。

 一昨年は左肩違和感で出遅れ。昨季も右脇腹痛を発症して開幕に間に合わず、初登板は9月9日ヤクルト戦となった。それでも同18日の中日戦で329日ぶりの白星を挙げると、7試合で4勝2敗、防御率1・65と優勝を争ったペナントレース最終盤の猛虎をエース格としてけん引。シーズン終了後の昨年11月中旬に左肘のクリーニング手術を受け、当初は今季序盤での復帰を視野に入れていた。だが…。2軍で過ごした春季キャンプ、その後の鳴尾浜での練習でも状態は上がることはなかった。そして将来を見据え、再びメスを入れる決断に至った。

 「トミー・ジョン手術」は一般的に、リハビリに12~16カ月の期間を要するとされる。球団では20年11月に右肘の同手術を受けた才木が21年11月の秋季練習で術後初めてフリー打撃に登板し、今年2月の春季キャンプ中に実戦復帰した。一方で才木と同時期に左肘の同手術を受けた島本はまだ実戦復帰に至っていないように、個人差もある。高橋も、来年5~7月ごろの実戦形式への復帰が、一つの目安となりそうだ。

 甲子園球場で取材に応じた矢野監督は「遥人の野球人生を考えれば、早く(手術を)やることが遥人のためだし、球団のためでもある。仕方ないことだなと受け止めています」と努めて前を向いた。決して後退ではない。より大きな成長を遂げるための決断。再びファンの前で躍動する日を見据えて、背番号29は長いリハビリの日々に向かう。(阪井 日向)

 ○…高橋は自身のインスタグラムも更新し、ファンに向けて現在の心境をつづった。左肘を支える固定器具を装着した写真とともにメッセージを投稿。「毎年のようにケガをしてチームの力になれない事、ファンの皆さんの期待に応えられない事が申し訳ないし、悔しいです」と、もどかしさを記すとともに最後は「もう一度ファンの皆さんの前でマウンドに立ち、チームの力になれるように頑張ります!」と復活への決意で締めくくった。

 ★18年 入団前の体力測定で左肩の筋力がやや弱いことが判明。4月11日の広島戦でプロ初登板初先発勝利を飾ったが、左肩のコンディション不良で6月10日のロッテ戦を最後に戦線離脱。そのままシーズン終了。

 ★20年 4月15日からの自主練習期間に左肩の違和感を訴え、5月から2軍で調整。新型コロナで遅れた6月19日の開幕にも間に合わず。1軍初登板は8月6日の巨人戦だった。

 ★21年 1軍春季キャンプ中の2月16日、楽天との練習試合登板で右脇腹に違和感。「右脇腹の筋挫傷」の診断で別メニュー調整。その後上肢のコンディション不良にも悩まされ、リハビリ期間が長期化。1軍初登板は9月9日のヤクルト戦だった。10月21日の中日戦ではシーズン3度目完封目前の9回投球練習中に左肘違和感で降板。11月6日、巨人とのCSファーストS第1戦で復帰も6回3失点で負け投手。同月に左肘のクリーニング手術を受けた。

 ▽肘靱帯再建手術 損傷した肘の靱帯(内側側副靱帯)を切除し、他の部位から正常な腱を移植する手術。1970年代に故フランク・ジョーブ博士が考案し、ドジャースの投手だったトミー・ジョンが74年に初めて受けたことにちなみ「トミー・ジョン手術」とも呼ばれる。日本球界では村田兆治(元ロッテ)が最初に受け、以降、桑田真澄(元巨人)、ダルビッシュ有(パドレス)、大谷翔平(エンゼルス)、前田健太(ツインズ)ら、多くの投手が経験。近年の阪神では20年11月に才木と島本が受けている。

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2022年4月27日のニュース