16戦1勝の経験者・田淵幸一氏「頑張れ」矢野阪神にエール

[ 2022年4月14日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神0-1中日 ( 2022年4月13日    バンテリンD )

<中・神>ベンチで帽子を取り、汗を拭う矢野監督(中)(撮影・椎名 航)
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 阪神は13日の中日戦で延長10回サヨナラ負けを喫し、1分けを挟み5連敗となった。9連敗に端を発した歴史的な開幕不振。球団最長の開幕6カード連続で勝ち越しがなく、球団最速で首位に10ゲーム差を離された。そして1979年西武がつくった16試合で1勝のプロ野球ワースト記録に並び、同史上最低勝率・067…。阪神OBで79年西武の主力だったスポニチ本紙評論家の田淵幸一氏(75)が、当時と阪神の現状を比較分析するとともに、矢野阪神にエールを送った。 

 43年前の西武と現在の阪神では根本的な状況が全然違う。阪神は昨季、9月まで首位に立っていて、リーグ2位。それが、これほどひどい成績になってしまうとは…。考えられない。一方の西武は本当に寄せ集めの集団だった。球場が完成しておらず、春季キャンプは米国。日本国内でオープン戦は1試合もできないまま開幕を迎えた。

 打てずに失策が多い。それは今の阪神との共通点かもしれない。西武は開幕16試合で零敗は4度。1試合平均で2・38得点だった。阪神も開幕16試合で零敗4度、平均2・44得点と似ている。ただ、当初は寄せ集めだったが当時の根本陸夫監督の慧眼(けいがん)ぶりは凄かった。78年からの4年間で有望な選手を集めて広岡達朗監督にバトンタッチ。のちの黄金時代の礎を築いた。

 阪神が泥沼を抜け出すにはどうすればいいのか。特効薬はない。まずは何度も指摘されているように、守護神スアレスの抜けた穴を埋めるべくリリーフ陣を整備すること。今は投打のバランスも大きく崩れている。この日のように、投手が抑えても打線が点を取れない。佐藤輝も3本塁打こそ打っているが、ここぞの打点が少ない。

 先日、阪神時代にバッテリーを組んでいた江夏豊と電話で話をした。話題になったのは、矢野監督が春季キャンプ前に「今年で退団する」と言ったこと。指揮官がいち早く「辞める」と宣言してしまった。これが大きな落とし穴になったと思う。吉と出るか、凶と出るか。開幕戦で大逆転負けを喫し、ずっとボタンの掛け違いが続いてしまっている印象だ。

 79年といえば「がんばれ!!タブチくん!!」が映画化された年。よく覚えている。その時の西武に並ぶプロ野球ワースト記録。矢野監督は針のむしろだろう。ただ、勝負の世界は甘くない。私は阪神に69~78年の10年間在籍。巨人のV9時代で2位が5回だったが、誰も褒めてはくれなかった。優勝してこそ、全国の阪神ファンは喜んでくれる。矢野監督にはぜひとも「頑張れ!」と声を掛けたい。(スポニチ本紙評論家) 

 ◇田淵 幸一(たぶち・こういち)1946年(昭21)9月24日生まれ、東京都出身の75歳。法政一から法大に進み、東京六大学リーグ新記録(当時)の22本塁打。68年ドラフト1位で阪神入りし、69年に新人王。79年から西武でプレーし84年限りで引退。通算1739試合で打率・260、474本塁打、1135打点。75年に本塁打王。90~92年にダイエー(現ソフトバンク)監督。阪神、楽天、北京五輪日本代表のコーチを歴任。20年に野球殿堂入り。
 
 ▽がんばれ!!タブチくん!! 79~80年に漫画誌「漫画アクション」で連載された、いしいひさいち氏の野球ギャグ漫画。阪神と西武に在籍していた田淵幸一氏(タブチくん)を中心に、実在する選手や監督をパロディー化したことで大ヒットした。同年にはアニメ映画化もされ、85~89年に単行本を発刊。かつては「若武者」と呼ばれながら、たこ焼きの食べ過ぎで巨大化して打撃不調に陥ってしまったタブチくんを主人公に周囲の人々との日常をコミカルに描いた。

 ▽79年の西武 クラウンから西武となり、所沢に移転1年目。開幕から2引き分けを挟み12連敗。開幕15戦目となった4月24日の南海戦で、新人の松沼博久が9回途中2失点の力投を見せ、4―2で初勝利を挙げた。17試合目の同27日の日本ハム戦では2勝目も、以降も苦戦が続き前後期制の前期を18勝40敗7分け、勝率.310の6位。後期は開幕戦の7月6日近鉄戦で白星発進も最終的に27勝33敗5分けの勝率.450で5位。シーズン合計では45勝73敗12分けの勝率.381で最下位だった。なお、移転後初勝利に貢献した松沼博が16勝で新人王に輝いた。

 《史上最低勝率.067》阪神は開幕16試合で1勝14敗1分け。勝率は前日の.071(7分1厘)からさらに下がり.067(6分7厘)となった。開幕から連敗した時の勝率.000を除き、勝率6分台となるケースはプロ野球史上初めて。これまでの最低は55年トンボ(1勝13敗)、79年西武(1勝13敗2分け)、今季12日阪神(1勝13敗1分け)の7分1厘だった。また、2リーグ制以降で最も遅いシーズン2勝目は、79年西武の17試合目だが阪神はどうか。

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