【内田雅也の追球】初回に見た「3球・無死二塁」 評価できる近本の積極性

[ 2022年3月5日 08:00 ]

オープン戦   阪神1ー2楽天 ( 2022年3月4日    甲子園 )

 初回、二盗を決める近本
Photo By スポニチ

 阪神は初回、わずか3球で無死二塁の好機をつくった。むろん1番・近本光司の初球安打~2球目二盗の功績である。

 本拠地・甲子園球場で今年初めての試合。初めての攻撃となる1回裏。初球フルスイングを心に決めていたのではないだろうか。そんな印象の右前打だった。楽天先発・則本昂大の初球、外角寄り速球を「1、2の3」で引っ張り、ライナーで二塁手右を破った。

 一塁走者となり、次打者・糸原健斗の1ボール後に走った。投球は内角低めチェンジアップで、糸原は空振り。捕手は送球できず、近本の二盗は悠々成功だった。こうして3球で無死二塁の好機を築いたのである。

 今季も1番に置く近本の積極性に期待する形、速攻を呼ぶ形である。

 近本は打って出るタイプの1番打者である。選んだり、粘ったりというタイプではない。昨季は打率・313でセ・リーグ4位だが、四球は33個と10傑では3番目に少ない。三振58個と合わせた指標「BB/K」は0・57と低い数字になる。

 それでも近本は打つのだ。昨季はセ・リーグ最多の178安打を放っている。カウント別打撃成績をみれば、初球(カウント0―0)の安打が43本で、0―1の23本、2―2の20本を大きく上回り最多だった。

 さらに盗塁をみる。記録担当によると、昨季の盗塁24個(セ・リーグ2位)をカウント別に集計すると、3球目までが14個、4球目以降が10個だった。早いカウントで走れば、次打者も打ちやすくなるのは自明だ。阪急黄金時代の福本豊―大熊忠義、2003年阪神優勝時の赤星憲広―金本知憲で、大熊も金本も走るまで待球した。

 リッキー・ヘンダーソン(当時アスレチックス)は1982年、当時大リーグ新記録の119盗塁を記録した際、二塁ベースを引き抜いて掲げた。試合後「もしこのベースを半分に割ることができたなら、半分をマーフィーに与えたい」と2番打者のドウェイン・マーフィーに感謝した。

 この日の2番・糸原は待球がきく。ただし追い込まれるまでに走るに越したことはない。近本に求められるのは打撃も盗塁も積極性なのだ。その点で「3球・無死二塁」を評価したい。

 結果は2死後、佐藤輝明の安打で先制した。できるなら糸原進塁打からジェフリー・マルテで得点……と書くのは控えておく。 =敬称略=(編集委員)

続きを表示

2022年3月5日のニュース