【内田雅也の追球】胸張れる首位 最悪状態で幸運の中断 猛虎たちよ「たっぷり水を飲め」

[ 2021年7月15日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3-4DeNA ( 2021年7月14日    甲子園 )

<神・D(15)> 2回無死一塁、ソトは右前打を放つ(投手・ガンケル)(撮影・大森 寛明)
Photo By スポニチ

 甲子園で試合を終えた阪神は一塁ベンチ前に整列し、スタンドのファンに頭を下げる。勝っても負けても続けている感謝の一礼である。時に、ここでは書けないようなヤジも飛ぶが、多くは健闘・敢闘をたたえる拍手が起きる。

 この夜は8回裏、山崎康晃に3連打、連続四球で1点差に迫った。9回裏も同点の走者を出した。あと1本まで迫った姿勢はたたえたい。

 3月26日に開幕してから3カ月半。84試合を戦い、48勝33敗3分け。貯金15、堂々の首位で前半戦を終える。胸を張ればいい。

 疲れがたまっていよう。球宴、そして五輪で約1カ月の長い中断期間を迎える。チーム状態が最悪の時だ。幸運ではないか。まずは休み、心と体をリフレッシュしたい。

 学生時代に読んだ村上春樹の小説『1973年のピンボール』(講談社文庫)で、青年「鼠(ねずみ)」にバーテンダー「ジェイ」が印象的な励ましの声をかける。

 「ねえ、誰かが言ったよ。ゆっくり歩け、そしてたっぷり水を飲めってね」

 実は今春3月21日にも当欄でこのセリフを書いている。オープン戦を12球団最高勝率で終えたチームへの手応えと、キャンプから手を抜かずに走ってきた慰労を書いた。いま再び、同じセリフを送りたい。

 長いシーズンを戦う上で、休養は重要な要素となる。その点でこの夜、主軸のジェフリー・マルテを休ませた用兵も理解したい。代わって3番で起用した陽川尚将の3三振は別の話である。

 もちろん敗れたのだから、敗因の分析と反省は必要だ。先発ジョー・ガンケルが失点した回はともに3連打がからんだ。今季好調で、これほど連打されるのは珍しい。

 2回表は宮崎敏郎、ネフタリ・ソト、大和と右打者3人に単打され無死満塁を招いた。打たれたのは3本とも内角へのツーシームだった。4回表は1死から下位打線の右打者、大和、伊藤光に連続短長打を浴びた。この時はともに外角へのスライダーだった。

 配球の偏りが気になる。梅野隆太郎に問題はなかったか。だが、捕手のリードを論評するのは難しい。スコアラーやコーチと事前の分析がある。内部事情は分からない。

 かつて本紙で原稿を書いていた栗山英樹が取材をしても<答えが見つからない理由>が日本ハム監督になってみて分かったと著書『覚悟』(KKベストセラーズ)で書いている。<そこに答えはないのだ。(中略)なぜなら、みんな答えを求めて戦っているわけではなく「結果」を求めて戦っているから>。

 厳しい勝負の世界だ。答えは分からないが「結果」を求める戦いは秋まで続く。先に前半戦と書いたが、実際は143試合のうち約6割(59%)を消化し、残りは59試合である。

 もうすぐ梅雨が明け、暑い真夏がくる。シーズン再開は8月13日だ。カレンダーに赤丸を記したうえ、今はまず休みたい。栄養ある食事をとり、ぐっすり眠ればいい。 =敬称略= (編集委員)

続きを表示

2021年7月15日のニュース