田淵幸一氏 思い出に残る伝統の一戦はONの前で3打席連発「格別だった」

[ 2021年5月11日 05:30 ]

伝統の一戦 15日 節目の2000試合

3打席連発となる一発を放ち、長嶋のそばで両手を広げる田淵
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 「伝統の一戦」。セ・リーグの東西の両雄によって長く激闘が繰り広げられてきた巨人―阪神戦が、15日に東京ドームで節目の2000試合目を迎える。1998試合を終えた現在、巨人が1093勝834敗71分けでリード。歴史に刻まれた熱戦の中から、思い出に残る試合を阪神OBでスポニチ評論家の田淵幸一氏(74)に振り返ってもらった。

 ≪73年4月26日 後楽園で3打席連発≫巨人戦は特別だった。何より、ONの前で打つのが格別だった。3打席連発。1本目と3本目は確か、後楽園の左翼後方に完成した「ジャンボスタンド」に飛び込んだ。ダイヤモンドを一周。三塁を守る長嶋さんの横を通る時に「田淵君、よう打ったね」と褒められた。敵味方関係なく優しい言葉を掛けてくれる。感激したよ。その3連発から、3試合にまたがって巨人戦で7打数連続本塁打。勲章だと思っている。

 ≪73年10月22日 130試合目でV逸≫阪神は「勝てば優勝」の10月20日の中日戦に敗れた。相手先発は星野仙ちゃん。試合中、移動の新幹線に乗っていた巨人ナインがナゴヤ球場の横を通過したのも語り草だ。そして迎えた甲子園での最終決戦。0―9の完敗で優勝を逃した。怒ったファンが巨人ベンチになだれ込んだ。私自身あまりに落ち込んで、その後1週間は家から外に出られなかった。野球人生の転機だったように思う。

 ≪73年6月12日 江夏が初の退場≫私と江夏は「黄金バッテリー」と呼ばれた。その江夏にとって唯一の退場がこの試合だ。8回、王さんへの内角直球。完璧な一球で三振だと思ったが、判定はボールだった。私が怒って抗議をしていると、横から江夏がやってきて大里球審を突き飛ばした。そして退場宣告を受ける前に自分からベンチに戻っていく。驚いたのをよく覚えている。

 伝統の一戦。試合前日は興奮して眠れず、相手投手を想定してシミュレーションもしていた。私自身、法大から巨人入りを希望。監督の川上さんに会って、背番号2も伝えられていたが、ウエーバー順のドラフトで指名されなかった。それだけに巨人戦は燃えに燃えた。特に甲子園。2000試合を迎えるというのは感慨深いね。

 ≪引退後の思い出は原監督の肩を抱いた星野監督≫田淵氏は現役時代以外で思い出に残る試合に、03年10月7日の最終戦を挙げた。退任が決まっていた巨人・原監督があいさつをし、阪神・星野監督が肩を抱いて言葉を掛ける。コーチだった田淵氏は、感動的なシーンを「ベンチから見ていた。よく覚えている」と振り返った。親友の星野監督と同時に退場した試合も忘れられない。02年8月23日。星野監督が先に抗議して退場処分になると、田淵氏は上本塁審を2度、両手で小突く。自身初の退場になった。その後は「2人でロッカーでテレビを見ていた」という。

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