DeNA・入江の快活な声にコロナ疲れが癒やされたという話

[ 2021年2月16日 16:20 ]

<DeNAキャンプ第4クール初日>キャッチボールする入江(撮影・島崎忠彦)
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 【君島圭介のスポーツ人間】高すぎず、低すぎず、ストレートにズバッと届く。DeNAのドラフト1位・入江大生投手(明大)がブルペンで投げる球、の方ではない。取材に応じるその声だ。明朗で張りがある。何より滑舌がいい。

 今年のキャンプは、どの球団も新型コロナウイルス感染予防のため、選手取材を制限している。沖縄・宜野湾のDeNAも同じ。囲み取材も最小限の人数で十分な距離を取って行われる。マスク着用で、しかも今年の沖縄は風が強い日が多く、はっきりと声も届きにくい。それでも入江の声はよく通る。

 かつて、毎年1月に行われていたNPB新人研修会では元ニッポン放送アナウンサー・深沢弘氏を講師に話し方講座が開催されていた。話題のルーキーを壇上に呼んで、インタビューを実践するのだが、あのメディア慣れした日本ハムの斎藤佑樹でさえ、「口の開き方が小さい」と指摘された。

 話し方講座が今はないのが残念だ。もし入江が呼ばれていたら100点どころか、アナウンサーへの転職を勧められただろう。そのきっかけを入江本人が明かしてくれた。

 「誰かに指導された訳ではない。高校(作新学院)の野球部に入ったとき、3学年で100人弱の部員がいた。その中で、まずアピールしなくてはいけないのは声の大きさ、はきはきした受け応え。そこは大事にしようと思った」

 キャンプ取材といえば記者にとって選手と1対1の親密な距離で話をする絶好の機会だった。勝負に徹しているシーズン中とは違って、選手も気軽に口を開いてくれる。技術面での取り組み方やオフに経験した出来事などを聞いて、その後の原稿に生かしていく。さらには仲良くなって食事に行き、芋焼酎や泡盛で乾杯することで1年間の付合いが始まる。ところが、そのすべてが今年は禁止だ。

 毎週のようにPCR検査を受け、どきどきしながら結果を待つ。幸いにも「陰性」が続いているが、どんなに気をつけても感染の可能性はゼロとはいい切れない。とくに長期のホテル滞在を強いられるこの時期は緊張感も高まる。

 そんな中、入江の快活な声はストレスの多いコロナ禍の取材で清涼剤となった。ところがちゃんと口を開けて大きな声を出すことは、それはそれで飛沫が多くなると奨励されないという。ああ、本当にウイルスが憎い。(専門委員) 

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2021年2月16日のニュース