【新春対談 金本前監督―阪神・大山(1)】「どこで打つか。勝利打点は一つでも多く、こだわりたい」

[ 2021年1月1日 11:00 ]

<大山・金本対談> 入団当時の監督・金本氏との新春トークに花を咲かせた大山。阪神の柱へと成長した若き主砲が2021年の球界に斬り込む(撮影・大森 寛明)
Photo By スポニチ

 スポーツニッポンの21年は、夢のマッチアップで明けた。本紙評論家の金本知憲氏と、阪神の大山悠輔内野手(26)によるスペシャル対談。16年のドラフト会議で1位指名し、誕生した師弟関係。テーマは「4番道」――。金本氏は「ここ一番で打て」「相手エースを打ってチームを勝たせろ」と心得を授けた。

 ――久々に対面して変化は。
 金本氏(以下金本) ちょっと、金持ち顔になったな、と(笑い)。小金持ちになったな、と。

 大山 変わらず緊張します。

 金本 緊張はせんだろう(笑い)。

 ――去年の印象を。
 金本 どんなボールでも対応できはじめた、というのは感じた。真ん中付近はホームランにできる雰囲気が出てきたし、元々、真っすぐも強い。それで獲ったんだから(※1)。あとはもう少し、真っすぐに強くなってほしい。プロ野球で真っすぐに弱いヤツは“以上、終わり”なんよ。速い球を投げておけば大丈夫というね。速い球に弱いとレギュラーになれない。ピッチャーがなぜ変化球を投げるかというと、真っすぐを打たれるから変化球を投げる。ただ、真っすぐを打てないと、(ピッチャーは)真っすぐだけで良いとなる。

 ――昨年は開幕スタメンを逃したところから始まった。
 大山 開幕スタメンから外れたことよりも、開幕戦に出場できなかった。開幕スタメンに出られなかったのは、自粛明けの練習試合で全然打てなかったので悪いのは自分ですけど(※2)、開幕戦で代打ですら出られなかったのが一番悔しくて。その悔しさが去年1年ずっとありました。それがつながったとは思います。

 ――サード以外にもファースト、外野も経験した。
 大山 開幕に出られず“どうしたら試合に出られるか”を考えていたので。“サードだけやります”では出られない状況もあった。そういうところから打席数ももらえていましたし、その気持ちがあったからこそマルテがケガをしても打ち続けることができたと思います(※3)。

 金本 何試合ぐらい出なかったの?

 大山 1週目だけですかね(※4)。マルテが広島戦でケガをして。

 ――改めて、4番を経験してみて。
 大山 すごく大事な打順、そこでしか経験できないこともある。大切さをすごく感じた1年でした。

 金本 1度期待されて、僕も1軍に上げてすぐに4番を打たせたんだっけ?初ホームランのとき(※5)。

 大山 そのときは5番でした。

 金本 9月ぐらいに打たせたのか。僕が1位指名したのは右の4番バッターを育てないといけん、というのがあったから。4番を打たせるつもりで獲った選手だから、そこを目指して定着してほしいとは思いますね。

 ――金本氏の言葉を聞いて。
 大山 持ち味として長打があると思うので、強いチームはクリーンアップだったり軸がしっかりしている。タイガースが強くなるためにも、1年間通して軸を打たないといけない。そのためにはもっと信頼をつかんでいかないといけないと思うので。しっかりとつかみ取りたい。

 ――4番の先輩としてもお聞きします。金本氏は4番として何を大切にしてきたのか。
 金本 オレの場合はFAで江藤がいなくなったり、前田がケガしたりで、回ってきた4番だった(※6)。大山とは違って、他にいなくて上がってきた4番だったから、そこまで4番に対するこだわりはなかったね。阪神でも1年目は3番打ったしね。岡田監督からは「他にいないからお前打て」みたいな感じだったから。その中で責任感を感じながらやってきたけど、たまたまホームランを30、40本打てたりとか。でも、何番を打とうが、良い場面で打ってチームを勝たせるという気持ちしかなかった。4番として大切なのは、ここ一番で打つことしかない。

 ――金本氏は相手がエース格になれば、4番として燃えていた。
 金本 とにかく自分が勝たせることしか思ってなかった。うぬぼれではないけど、自分が打たないと勝てないと思っていたから。打力が弱かったから、06~08年とか。自分が打つしかないという感覚はあったかな。相手のウイニングショットを狙って。良いピッチャーはだいたい球が速い。4番がストレートに負けていると、チームに与える影響がある。うぬぼれじゃないけど、全盛期の頃は“カネさんが打てないのに、俺ら打てない”という空気もあった。そこら辺で真っすぐに詰まるわけにはいかなかった。先っちょで折られるのは関係ないけど。

 ――4番として目指すべき姿をどう描く。
 大山 金本さんがおっしゃったように、どの場面で打つかが大事。いざ試合が始まれば最初だけで1番も4番も関係ないので、大事な場面、勝利打点というところ。タイトルにつながるわけではないですが、勝利打点は一つでも多く取りたい。その分、チームが勝ったことになるので、その数字はこだわりたい(※7)。

 ――矢野監督が早々と明言している打順は4番大山のみ。この時期に言われることについて。
 大山 やらないといけない強い気持ちはありますが、不安もあります。大事な打順だと分かっているので。そこがしっかりしないことには、チームがまとまらない。もっともっと練習しないといけないと思っています。

 ――今季の抱負を。
 大山 昨年はすごく良い形でシーズンを過ごせました(※8)。今年も勝負だと思ってますし、1年だけ成績残したという選手ではダメだと思うので、何年も続けて成績を残すことが一番大事で、そのためにも2021年が大事になる。成績を残すことも大切ですが、ケガをしてしまったら試合に出られないのでそういうところから、また一からじゃないですけど、やっていきたいと思っています。(1月2日に続く)

 ※1 16年10月20日のドラフト会議、金本監督(当時)が単独1位のサプライズ指名。
 ※2 6月2日の練習試合再開以降、7試合で16打数無安打。
 ※3 7月4日の広島戦、左ふくらはぎの張りで途中交代。
 ※4 初スタメンは開幕2試合目の6月20日巨人戦で5番。4番は14試合目の7月5日広島戦から。
 ※5 17年7月1日ヤクルト戦(甲子園)3回、原樹からプロ初安打弾。
 ※6 99年オフに江藤がFAで巨人へ。00年6月4日以降、左アキレス腱を痛めた前田に代わり4番を務めた。
 ※7 20年はチーム最多で自己最多15度。
 ※8 19年14本から倍増の28本塁打と打点85、打率.288の主要3部門でキャリアハイ。

続きを表示

2021年1月1日のニュース