【阪神新人連載】石井大 ブラジルへ、北米へ 世界知って大きく成長

[ 2020年12月28日 11:00 ]

牙を研ぐルーキー2020 8位・石井大智投手(下)

高知FD時代の石井大智

 秋田を飛び出して約900キロ離れた四国・高知へ入団した大智は3年間でさらに変化を遂げた。

 1年目が終わった18年12月には海外での普及活動の一貫としてブラジルへ行き、野球教室を行った。「外国人と接する中で、考え方とか新しい世界が見えた。もともとまわりに関与しないで自分だけという感じだったが、明るくなって社交的になった」。言葉も通じない異国の地で過ごし、刺激を受けて精神的にも成長した。

 2年目の19年には北米遠征のメンバーに選出された。独立リーグ「キャンナムリーグ」の6球団と19試合を行い、4試合に登板。チームトップの2勝(2敗)を挙げた。「向こうのチームにオファーをいただいたり、手応えを感じた。もしNPBに行けなかったら、海外に行こうかなという考えにはなりました」。自信を深めた海外遠征だった。

 3年目は春先から不調が続き、コロナ禍で開幕延期が決まってからは、自粛期間にフォームの改善に取り組んだ。17試合登板で6勝7敗、防御率1・69。投球回(101回)を上回る129三振を奪った。ダイエーや阪神などでも活躍した高知・吉田豊彦監督からも「とにかくやってみようという好奇心をすごく持っている。メンタル的にも、考え方や行動力にしても、一番安定しているというか大人な部分がある」と高く評価された。

 秋田にいる家族の存在が大きかった。父子家庭で育ち、自らを「生粋のおばあちゃん子」と話す。1年目の終わり頃から、実家が農家の祖母にお米を送ってもらっていた。「めちゃくちゃおいしい。(お米の効果は)もちろんありますね」

 父・智之さんも、高知で活躍する息子の姿に歓喜した。球団ホームページやYouTubeをこまめにチェック。「大智が先発で配信されるのであれば、必ずと言っていいほど見ていた」。試合の配信動画と球種の分かる速報サイトで試合内容を照らし合わせ、試合後には反省点やアドバイスをLINEで送っていた。

 「これから活躍するのが楽しみでしょうがない」と智之さん。高専出身のドラフト指名は近大高専から09年の巨人2位・鬼屋敷正人捕手以来、史上2人目。支配下最後の74番目の指名からはい上がり、家族へ恩返しする。 (須田 麻祐子)

 ◆石井 大智(いしい・だいち)1997年7月29日生まれ、秋田県秋田市出身の23歳。小3から旭川スポーツ少年団で野球を始める。秋田東中では軟式野球部に所属。秋田高専では2年秋からエースも3年夏は秋田大会2回戦敗退で甲子園出場なし。四国・高知で18年から3年間プレー。最速153キロ。1メートル75、81キロ。右投げ右打ち。

続きを表示

2020年12月28日のニュース