調整、年俸査定、ドラフト、続く膨大な支出…プロ野球界にも影落とすコロナ禍 

[ 2020年4月11日 09:15 ]

 新型コロナウイルスの感染拡大は、プロ野球界にも影を落としている。開幕の日程すら決まらない状況に選手たちは不安を募らせており、ある中堅の野手は「今は野球がやりたいなんて言える状況じゃないことは分かっている」と前置きした上で「ターゲットがないのでどうやって調整すれば良いのか分からない。そもそも、開幕するんですかね」と漏らした。

 現場からは悲鳴にも似た声が飛び交っているが、先に目を向けると、さらなる難題が待っている。「選手の年俸の査定はどうすればいいのか。試合ができない状況で、例年のように選手を評価することはできないし…。とてもじゃないけど、戦力外通告なんてできませんよ」。長く球団運営に関わってきた球界関係者は深いため息をついた。

 毎年秋に実施されるドラフト会議で各球団が新戦力を獲得するが、支配下選手の枠は各球団70人と決まっている。「金の卵」がプロの門を叩いた数とほぼ同じだけの選手がユニホームを脱がなければいけない厳しい世界。選手枠に関してNPBや12球団、選手会の間で特例措置について議論されることにはなるだろうが、選手の人生が懸かっているだけに、落としどころを見いだすのは容易ではないはずだ。

 ドラフトに関して、別の球団関係者が複雑な胸中を吐露する。「この状況が続けば、アマチュア選手をどうやって評価すればいいのか。現時点で上位候補として力量を把握している選手もいるけど、春から夏の大会でいきなり頭角を現す選手を発掘できない。他球団の動向も読めないし、本当に難しい」。編成担当者は一様に頭を抱えている。

 営業面に目を向けると、各球団の経営にも大きな打撃を与えそうだ。当然のことながら、試合を開催できなければ収入源の柱でもある入場料は得られない。仮に無観客試合で開幕した場合も同様だ。スポンサー料収入についても、当初の契約通りの金額を球団が受け取れるとは考えにくい。

 収入の見通しが立たない一方で、球団側の膨大な支出は続いている。最大の支出は、選手の年俸やスタッフ、球団職員への給料などの人件費。昨年5月に日本プロ野球選手会が発表した年俸調査のデータがある。開幕時の支配下選手に限定された数字(外国人選手は除く)だが、12球団の総額は計291億3105万円。球団別で最多だったソフトバンクは39億2303万円で、最少のオリックスで16億1915万円となっている。

 「今年は間違いなく大赤字。極めて厳しい状況になる」と話すのはパ・リーグのある球団関係者。球界の発展のためにも「コロナ禍」の一日も早い終息を願うばかりだ。(記者コラム・重光晋太郎)

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2020年4月11日のニュース