西武 3年目・今井 “スマートなエース”を継ぐ男がみせる成長の証し

[ 2019年2月22日 11:45 ]

西武の今井
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 スマートなエースへ。先週、昨年まで担当した西武の宮崎・南郷キャンプを訪問した。メイン球場から135段の階段を降りたブルペン。ある投手の着実な進化を感じた。プロ3年目を迎えた今井だ。

 昨年6月、西武では99年の松坂(中日)以来の初登板初先発初勝利を挙げた。15試合に登板し5勝5敗、防御率4・81。飛躍を期す3年目に向けて、昨年12月の優勝旅行も辞退して鍛え抜いた成果は目に見えて表れていた。ユニホームのズボンがやや小さく見えるほど、ひと冬で下半身の筋肉がしっかりした。「華奢」から「細マッチョ」へ。それによって投球時の土台になる下半身の力強さと安定感が数段、上がった。「自分でもそう感じるところはあります。シーズンを戦うためには6、7割から7、8割でどのくらいのボールが投げられるかが大事」。昨年よりも排気量の上がった土台。安定したフォームの再現性を得たことで「真っ直ぐは強くなってきている」と実感もある。

 紅白戦初戦だった16日。早くも成長の一端がかたちとなった。白組先発で登板。3番の中村に対してはギアを上げ150キロを連発。最後はスライダーで空振り三振を奪うなど3者凡退。だが、目に見える結果とは違う成長があったのは、1安打と2四球で満塁のピンチを背負ったものの無失点に抑えた2回だった。ピンチを背負った2回が?と思うだろうが、実は今井、初回の投球中に右中指のツメが大きく割れていた。「2回はグッと力を入れたらもっと割れてしまうかなと思って、いけなかった」。それでもその回の直球の最速は148キロ。セーブしながらもゼロで抑えることは、シーズン中に万全ではないときにどう抑えるかにもつながる。結果だけでは計れない成長だと感じた。

 投球後、対戦した打者からは口々に「速いな」と声をかけられた。エース菊池がメジャーへ渡った。開幕投手に決まった多和田が軸になるが、今井の存在が今季の西武先発陣の支えになりそうだ。

 辻監督からはオフ期間に最低でも2桁勝利をとノルマを課せられた。投球後のベンチ裏。今井はその辻監督と馬場作戦兼内野守備走塁コーチと3人になり、こんなやり取りがあった。

 馬場コーチ「今年は何勝するんや?」

 今井「10勝くらいですかね」

 馬場コーチ「10勝10敗じゃ貯金なしだろ。12勝5敗くらいにしろ」

 今井「はい」

 黙ってやりとりを見守っていた辻監督が、その様子を記者に明かしてくれたのだが、なんとも頼もしそうな笑顔だったのが印象的だった。

 昨年のシーズン中「(細めのジーンズがはけなくなる)それが嫌なので、足は太くなりたくない」と言っていた20歳。「それは今でも嫌ですよ」と笑ったが、明らかに質がかわった細くて強い土台が今季の躍進をささえるだろう。主力が抜けても、ドラフト上位選手の若手がどんどん頭角を現す西武のチーム力も実感した。

 西口、岸と続くスマートなエースの系譜。いずれ、今井がそれに続く存在となる予感を感じて上った135段の階段は、少し短く感じた。(記者コラム・春川 英樹)

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2019年2月22日のニュース