【新井氏&誠也対談3】誠也「新井さん、黒田さんに残してもらったものを自覚して伝えたい」
――きちんと分析できるのが素晴らしい。
新井 「だから、誠也はスゴいんですって。漢字は苦手だけど、野球の頭は偉い」(笑い)
誠也 (笑い)
新井 「ボク、打撃練習とかいろいろ見ているんですよ。打てなくなる原因はいろいろあって、技術的にダメな場合があれば、疲れからバットが出なくなっているケースもある。ヨシと思ってバットを振ったのに、差し込まれてファウルになったりしたら、アレッてなるんです」
誠也 「ありますね」
新井 「その場合はフォームに走りがちだけど、疲れで反応が鈍くなっているケースも結構多い。誠也がどう感じていたかはわからないけど、終盤は自分のスイングが思うようにできなくて、いろいろ考えた末にトライしたと思うんです」
誠也 「そうですね」
新井 「だから、言わなかった。誠也は誠也で必死に考えてやっているんだから。で、メルセデスのカーブをレフトに運んだのをベンチで見て“出た、たまたま”と思って。ゆる〜い、しかも入って来る球だから、たまたま(タイミングが)合ったみたいな(笑い)そこで聞いたよね。“こういう感じじゃなかったか?”って」
誠也 「はい。たまたまです」(笑い)
新井 「日本シリーズ前も同じ練習をやっていたら、言おうと思っていましたけどね」
――鈴木選手が初めて4番に座った17年は、精神的に苦しい時期がありました。経験者としての助言も…。
新井 「いやいや、大したことは言っていないです、ボク」
誠也 「助言をいただきましたよ。“自分が思っている以上に、周りは…”って」
新井 「“自分が思っている以上に、周りはみんなお前のことを見ているし、チームへの影響も大きいんだよ”ということは言った。あれ、17年だっけ?」
誠也 「はい。“ガマン、ガマン”と。確か夏前、6月か7月ぐらいでした」
新井 「確かにあの頃は、精神的にツラそうだった。“これは言った方が誠也のためになる。言わないとダメだな”って感じたので、伝えたんです」
誠也 「何もうれしくなかったんですよ。打点を挙げても、ヒットを打ってもうれしくない。いくらヒットを打とうが納得いかない…という状態が続いて。もうどうでもいい…みたいな、今までにない感覚だったんです。でも、どうしたらいいかわからない」
新井 「分かるよ」
誠也 「心の中ではずっと“こんなんじゃダメだ”って思っていたんですね。でも、どうしたらいいのか。その繰り返しです。試合で結果も出さないといけない。焦っていたし、いろんなものが重なって究極でしたね」
新井 「あの時の自分はダメだって気付けるのが素晴らしいよ」
――新井さんとプレーした4年間、鈴木選手にはどんな学びがあったんでしょう。
誠也 「黒田さんも含めてですが、レギュラー選手はやっぱりそうなんだ…と感じ取れたのが一番ですね。2軍の時から漠然と、レギュラーはこういうもの…と考えてはいたんですけど、新井さんと黒田さんの姿を見て、思いを強くしました。チームには、試合に出たくても出られない選手がたくさんいる。そういう人たちのことも背負い、私生活や練習態度、話す言葉、すべてができてレギュラーだと思うんです」
新井 「自分さえ良ければいい…では、ダメということだよな?」
誠也 「はい」
新井 「プロ野球なんだけど、アマチュア精神でいうところの、メンバーに入れなかったヤツのために頑張るゾ…っていうね。プロ野球でも、そういう気持ちは大事。自分さえ結果を出して給料が上がっていけばいい…っていう考えじゃダメ。特にカープというチームは。そういうことを言いたいんだよな?」
誠也 「そうです。だから、試合に出られない人たちを、認めさせないといけないと思うんですよ。アイツが出るなら応援する…って思わせるのがレギュラー。練習態度や人との接し方、すべてができてこそ本当のレギュラーだと思うんです」
新井 「そうだな」
誠也 「新井さんが試合に出ても多分、誰も不満に思わない。“何でだよ”って思う人は絶対に居ない。そこが大事。周囲が眉をひそめる態度を取り、“オレが代わりに出たい”と控え選手に思わせているうちは、レギュラーじゃない。それは新井さん、黒田さんの姿を見て感じたので、見習いたい…とずっと思っていました」
――実際、若手選手にはいろんなアドバイスを送っていますね。
誠也 「ボクは見て感じることができましたけど、感じ取れない選手もいますから。それにボクも(1軍に定着した)16年や、17年にケガをして気付くことが多かったので、できるだけ早く伝えて何かを感じてくれれば。実際は自分で気付かないとわからないと思いますが、言っておくことで“そう言えばあの時に”って思い起こすこともありますから」
新井 「素晴らしい。誠也にはボク、言うことはないです」
――才能ある4番の後継者が“新井さん、黒田さんの姿を見て”と共感してくれる。冥利(みょうり)に尽きますね。
新井 「うれしいですね。やっぱり3連覇したのが大きいですよ。誠也は、黒田さんが復帰する前のカープも知っているでしょ。帰って来る前と、帰って来た後のチームは?」
誠也 「全然違いますね。2つのカープを経験しています」
新井 「その中に3連覇という実績が付いてきた。こうチームがまとまれば優勝争いに食い込める、優勝できる…ということが、雰囲気や何かでわかっている。これは大きい」
誠也 「自分のことだけやっていてはダメだと思うし、自分の結果が良くてもチームが勝てなかったらうれしくないですから」
新井 「そう。黒田さんとは若い時から一緒に“バラバラでは勝てない。投手と野手でコミュニケーションを取り、一丸となってやっていこう”とやってきた。でも、結果が出ないわけよ。最多勝や本塁打王を獲っても、チームが最下位だと誰も認めてくれない。だから勝たないとダメ。優勝しないと。誠也は、チーム一丸で戦うことがカープには最善だとわかっている」
――新井さんが故障離脱中の昨季序盤、故障明けの鈴木選手はベンチ待機している際、殊勲打の選手らを笑顔で真っ先に出迎えていました。
新井 「素晴らしい。そういう姿勢が周りを振り向かせ、チームを引っ張る力になる。来年は何年目かな?」
誠也 「7年目です。25歳になります」
新井 「大卒で言えば3年目か。仲間とふさげ合ったりするけど、頭は賢いからね」
誠也 「やっぱり楽しくやりたいので」(笑い)
新井 「いろんなことを見て感じ取れる。4番は大変だし、重荷になるほど背負わなくてもいいけど、少しずつ発信した方がいい…とオレは思うなぁ」
誠也 「そうですね。新井さん、黒田さんに残してもらったものを消してはいけない。そこは自覚して伝えていこうと思います」
新井 「素晴らしい考え方をしているし、言うことで責任感も芽生える。そのポジションにいると思うので、段階を追ってね」
誠也 「頑張ります」
新井 「今日はありがとう。4連覇と日本一を目指して頑張れ。応援しています」
誠也 「ありがとうございました」
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