【新井氏&誠也対談2】新井氏「阪神時代から見ていた。“いいスイング”って」ブレークに「来たな…と」
――新井さんが広島に復帰した2015年、お二人にはお互いがどう見えていましたか?
新井 「もちろんチームの中心になると思ったし、いずれは4番を打つと思いました。阪神に在籍していた前年から、終盤に1軍に上がった誠也を見て“いいスイングをするな”と感じていたんです。一度、広島市内の飲食店で会ったよな?」
誠也 「はい。“いいスイングだな”と声を掛けてもらいました」
新井 「面構えもいいと思った。負けん気が強そうな。いい選手が出て来たな…と。
誠也 「ボクは新井さん、黒田(博樹)さんと一緒にプレーできていることがうれしかったです。単純に」
新井 「その頃はまだ自分のことで精いっぱいだろうからな」
誠也 「はい。周りを見る余裕も、考える余裕もなかったです」
――翌16年に鈴木選手は大ブレークした。
新井 「来たな…と。普通は1段だけど、いきなり2〜3段飛ばしで来たな…と感じました。オリックス戦の3試合連続決勝弾(6月17〜19日)を“神ってる”と言われたけど、マグレみたいで誠也には失礼な話。1年間通して素晴らしい成績を残したわけですから。確かな技術がないと、運だけで成績を残せる世界じゃないので」
――25年ぶりの優勝を決めた9月10日、東京ドームでの巨人戦でも2本塁打を放った。
新井 「優勝を決める試合で、2発はなかなか打てないからね」
誠也 「ボク、1年目に巨人の優勝(13年9月22日)を東京ドームで見ているんですよ。胴上げを見るのがスゴく嫌で、“いつか絶対にここで優勝してやろう”と思った。だから、あの日は“絶対にここで決める”と気持ちが高ぶっていて…」
新井 「素晴らしいですね。その時の記憶をエネルギーに変えられるわけだから」
誠也 「緊張して足が震えていたけど、あの年はそういう年でしたね。やることすべてが恐ろしいぐらいにハマるし、勢いだけで流れに乗っていける」
新井 「それも確かな技術があるからよ。マグレでは打てない」
――打者として鈴木選手がすぐれているところはどこでしょう。
新井 「すべてじゃないですか。長打が打てるし、勝負強い。賢いし、割り切れるし、割り切る勇気もある。技術を含めて全部がスゴい。しかも、3年間素晴らしい成績を残しているのに、まだ伸びしろがある。そう期待させる力を秘めているのがスゴい。誠也なら40本、40盗塁もあり得ると思いますよ」
誠也 「昨季は、盗塁を含めてもう少し走りたかったんです。もともとのプレースタイルなので。首脳陣はもっと走ってほしいと思っているだろうし、スピードがあるうちは…」
新井 「今は葛藤があるだろうけど、ケガが治ったら40、40を目指してほしい。足が速いんだし、走ることで打撃にも守備にもいい影響を及ぼすので」
――新井さんと鈴木選手の共通項はカープの4番。4番打者とはどんな存在でしょう。
新井 「誠也、どう思う?」
誠也 「昨季終盤に初めてわかりました。4番とはこういうことなんだ…と。マジック1(9月23日)になってからの期間、丸さんもボクも状態が落ち気味で勝てない時があり、そういう時に限ってチャンスで4番に打席が回ってくるんです」
新井 (笑)
誠也 「そう感じるんですよ。“こういう時に限って何でオレに回るんだよ”って」(笑い)
新井 「そうそう。“何でオレなんや”みたいなね」(笑い)
誠也 「それまで丸さんが打つと、“何で打つんだよ”って思ったのに、現金なもので、その時は“頼むから打ってくれ、回ってくるな”と考えるんです」
新井 「わかるよ」
誠也 「新井さんにもよく言われましたが、今はチームが強いから他の選手が打つし、自分が打てなくても軽減される。でも、Bクラスに落ちた時にこれが続くと、相当に苦しいと思うんですよ」
――新井さんの実体験でもありますね。
新井 「今となったらいい経験ですけどね」
誠也 「今はチームが弱くなった時の下準備というか、今じゃないと思うんですよ。本当の仕事は。弱くなり、Aクラスが懸かるという時に打つのが4番、一番大事な時に打つのが4番だ…と」
新井 「誠也は漢字が苦手だけど、賢いんです。この若さでいいことを考えているし、深い。感心する」(笑い)
誠也 (笑い)「現実的に(好調が)ずっと続くわけじゃない。新井さんに昔話を聞かせてもらうと、今じゃないと思いますね」
――苦しい時期は新井さんから助言も。
新井 「いや、そんなに声を掛けていないですよ。これは言わなきゃ…と思ったら言うけど、自分から言うことは基本あまりない。年に1、2回か…」
誠也 「昨季の終盤、ボクが変になった時にはあります」(笑い)
新井 「誠也はボクと違うんですよ。ボクは出たとこ勝負で単細胞だけど、誠也はいろんなことを深く考え、計画性がある。ポテンシャルもボクなんかより全然スゴい。ただ、あの時は目に余るというか“何やっとるんや”みたいな」(大笑い)
誠也 「いろいろ打ち方を変えて」(笑い)
新井 「カーブを打ったのはいつだっけ?」
誠也 「クライマックスシリーズ(対巨人、10月17日の第1戦)です。変な打ち方で、入ってきたメルセデスのカーブを出合い頭に」
新井 「CSの時はこれ(バットを構えた時に小さな動きを入れる動作)でやっとったよな。それでカーブをホームランした」
誠也 「はい。1カ所バッティングでも結果が出ないままCSに入り、突破後にまた打ち方を戻した時、新井さんに“お前、変えたのか? 何であんなことをしとったん?”と言われたんです」(笑い)
新井 「そう。日本シリーズ前に」(笑い)
誠也 「“そっちの方がいい。ちょっと安心した”って」(笑い)
新井 「誠也はいろんなことをトライしようと思っているんです。それがボクにもわかるから、あまり言わないんですよ。でも、あの時はさすがに」(笑い)
誠也 「さっきも言いましたけど、終盤から状態が落ち気味で、そのままだと悪いイメージしかない。しっかり振れる打ち方に、取りあえずしたかったんですね。結果はダメで、高めの真っすぐが当たらない。でも、トライしたからこそ、高めの150〜160キロをしばければ、どの球も打てる…と改めて感じることができました」
新井 「うんうん」
誠也 「ボクの中では変えて良かったと思います。あの打ち方では高めに手が出ない。高めを打つ大事さに気付き、日本シリーズ前は元に戻して高めを打つ練習をしました。打ち方を変えずCSに入っていたら、あの日本シリーズ(敢闘賞)はなかったと思います」
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