「強打者=左打ち」の流れ変えるか 広陵・中村への期待

[ 2017年9月6日 14:25 ]

第99回全国高校野球選手権大会準決勝の天理戦の5回無死、今大会6本目の大会新記録となる本塁打を放つ広陵・中村
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 今夏の甲子園で広陵・中村奨成が大会新記録となる6本塁打を放ち、大きな注目を集めたのは記憶に新しい。すでにプロ入りを表明しており、ニューヒーローの誕生を心待ちにしていたプロ野球界にとっても明るいニュースだった。

 各球団とも走攻守、三拍子そろった中村に「特A」の評価を与えており、ドラフト会議では1位指名で複数球団が競合することになるだろう。あるプロ関係者は「右打ちの強打者というのが、より魅力的な存在にしている。最近は本当に左打者が多いからね」と話す。

 私が子供の頃、左打者は珍しく貴重な存在だった。少年野球チームでもほとんどが右打ち。だが、今は違う。巨人の鹿取義隆GMは「今は小学生や中学生の段階で左打ちになるケースが多い。特に足の速い選手を左打ちに転向させる指導者が多い。なかなか右の強打者は育ってこない。この流れは当分変わることはないんじゃないかな」と潮流を説明する。

 たしかに、三塁側にある右打席よりも、左打席の方が一塁ベースへの到達スピードが早いのは事実だ。少年野球や高校野球は土のグラウンドとあって、内野安打での出塁も期待できる。

 一方で、右打ちから左打ちになった場合、どうしても本能的な動きというよりも「人工的なフォーム」でバットを振ることになる。ある強豪私立高の指導者も「高校に入学する時点でフルスイングよりもミート型のバッティングが染みついている選手が多い。今のリトルリーグやシニアリーグの指導者の世代はイチロー選手に影響を受けた世代が多いというのもあるのかもしれないね。して悪いことではないけど、(右の)長距離打者を育てる難しさはある」と漏らす。

 かつては強打者といえば右打者のイメージが強かったが、現在はDeNA・筒香や日本ハム・大谷、さらには早実・清宮といった左打者を思い浮かべる人が多いだろう。それは子供たちも同じ。「子供は必ずプロのまねをする」と鹿取GM。これはいつの時代になっても変わらない。だからこそ、今の時代に求められるのは野球少年が憧れるような右の大砲の存在だ。そういう意味でも、広陵・中村が「右打者への回帰」という潮流をつくれる選手になってもらいたい。(記者コラム・重光 晋太郎)

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2017年9月6日のニュース