マー君逆転Vへ「全部勝つ」 “新兵器”は握り変えたスプリット

[ 2015年9月15日 05:30 ]

<ヤンキース・ブルージェイズ>7回、ボールに話しかけてから投球し、最後の打者を打ち取る田中

ア・リーグ ヤンキース5―0ブルージェイズ

(9月13日 ニューヨーク)
 崖っ縁で踏みとどまった。ヤンキースの田中将大投手(26)が13日(日本時間14日)、直接対決3連敗で迎えた地区首位のブルージェイズ戦に先発。負ければ自力優勝の可能性が消滅する一戦で7回を4安打無失点、12勝目を挙げた。チームの連敗を5、球団ワースト記録だった本拠地でのブ軍戦連敗を7で止め、ゲーム差を3・5に戻した。残りは20試合。逆転地区Vへ、エース田中の力が必要となる。

 吠えた。4―0の7回2死二塁。108球目でピラーを右飛に仕留めると、田中は叫んだ。7回無失点。崖っ縁で踏みとどまっ た上に、チームに1勝以上の力をもたらす、エースの投球だった。

 「何としても4連敗だけは避けたかった。絶対に勝つと、強い気持ちでマウンドに上がった」

 1・5ゲーム差で迎えた直接対決4連戦。3試合で10本塁打を含む30失点で3連敗し、敗れれば自力優勝が消滅する危機でマウンドに上がった。相手の勢いを止めたのは、田中の総合力の高さを示すけん制球だった。

 0―0の2回1死二塁。打席のゴーインズを1ボール2ストライクと追い込むと、遊撃手のグリゴリアスと目が合った。その瞬間、素早くターンして二塁へけん制。一度はセーフの判定も、ヤ軍ベンチはチャレンジを要求し、ビデオ判定の末、アウトとなった。

 「リードは大きいと思っていた。(グリゴリアスと)完全にアイコンタクトだったけど、大きいプレー」。ピンチを脱した直後の4球目に、この日最速95マイル(約153キロ)で空振り三振。「いいプレーができて、そこでまた打たれると“ああ”というふうになる」と勝負どころを見極め、こん身の1球を投じた。

 投球では、前回登板から「握りを変えた」スプリットを自在に操った。縦に落ちる軌道と、落差を少なく右打者の内角へ食い込むシュートのように変化する「横スプ」の投げ分け。初回から低めのスプリットをマークしてきた相手を察知し、「横スプ」で効果的にカウントを整え、スライダー系を決め球に使った。

 象徴的だったのは7回、先頭の主砲バティスタとの対戦。5球連続スプリットで追い込み、最後は81マイル(約130キロ)の速いカーブで空振り三振に斬った。普段は「ションベンカーブ」と謙遜するが「きょうは、ションベンとは言わないですよ。あそこは少しスピードを上げてそういう球を投げたから」。同じ球種の速度を変える、引き出しの多さを見せつけ4回以降は1安打に抑えた。

 スタンドで観戦したまい夫人に、妊娠公表後初白星を届けた田中。「負けられないという感じじゃなく、全部勝つんだという気持ち。残りも自分らしく、しっかりとやっていけたら」。頼もしいエースのネバーギブアップ宣言だった。(ニューヨーク・春川 英樹)

 ▼ヤンキース、ジョー・ジラルディ監督 田中は日本でもこういう試合で投げてきたし楽しんでいた。とても大きな勝利だ。我々は、ワイルドカードは見ていない。あくまでも地区優勝を見ている。

続きを表示

この記事のフォト

2015年9月15日のニュース