NPB、チャレンジ制度導入も 初めて誤審認め“幻弾”を謝罪

[ 2015年9月15日 05:35 ]

オーナー会議後に行われた会見で謝罪した熊崎コミッショナー。右は西武・後藤オーナー

 日本野球機構(NPB)は14日、12日の阪神―広島20回戦(甲子園)でビデオ判定の結果、三塁打と判定された打球は本塁打の誤りだったと発表した。試合は2―2の引き分けで成立しており、記録の訂正は行わない。熊崎勝彦コミッショナー(73)は都内で行われたオーナー会議後の記者会見で謝罪した上で、チャレンジ制度の導入やビデオ判定の適用範囲拡大とともに包括的に再発防止へ議論を進める方針を示した。

 会見終了に際し、熊崎コミッショナーは壇上で前に出て、深々と頭を下げて謝罪の意を表した。会見中の質問にも丁寧に、力を込めて説明した。

 「断じてあってはならないこと。野球ファンの皆さま、球団関係者に対して、深く、深くおわび申し上げなければならない。それだけで済むことではなく、再発防止に向けて徹底的に検証していく。これは私の断固たる意思でございます」

 12日の試合で12回表に広島・田中が放った中堅への飛球がビデオ判定の末に三塁打と判定された件で、13日、広島の鈴木清明本部長が再検証を求めた。セ・リーグの杵渕和秀統括、NPBの友寄正人審判長が映像を再検証し、打球はフェンスを越えてグラウンドに跳ね返った本塁打だったと判断した。10年に導入されたビデオ判定で「誤審」の判断は初。それどころか、NPBとして公式に判定の間違いを認めた初のケースとなった。

 誤審の要因として、杵渕統括は「審判員の思い込みが大きな原因。まさかワイヤ(忍び返し、と呼ばれる進入防止柵)に当たって跳ね返ると想定をしていなかった」と説明。全審判員に先入観を持たずビデオ判定を行うよう徹底していくことも確認した。なお、当該審判員への処分はない。

 勝敗や記録の訂正は行われない。本塁打が正しく判定されていたとしても、どう試合の勝敗に影響したかは判断できない。ただ、首位ヤクルトから4位の広島まで3ゲーム差に入る「史上空前の混セ」で起こった。結果として誤審が順位決定に影響する可能性もある。それぞれの球団を応援する多くのファンのもやもやまでは晴らせない。

 オーナー会議に出席した広島・松田元オーナーは「頭にはくるが、しようがない。どういう形で審判が改良していくかが重要」と話した。熊崎コミッショナーは「どう再発を防止するかが、ファンに対しての思いをくむことにもつながる」とし、「チャレンジやリプレー制度の話も実行委員会等々で出ている」と言葉を続けた。すでに7月の12球団監督会議で、大リーグが行うチャレンジ制度の導入や、本塁打以外の判定にもリプレー映像を使用できる制度への変更が議論され、今月7日の実行委員会でも議題に上がった。今後つきまとう判定に対する疑念を払しょくするには、球界全体で判定システム構築への議論を尽くすしかない。(倉橋 憲史)

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