能見 恩人亡くなった富山遠征で奮投…足がつるまで投げきった

[ 2015年6月25日 08:05 ]

<広・神>笑顔でナインを迎える能見

セ・リーグ 阪神7-2広島

(6月24日 富山)
 “限界”が来るまで腕を振った。8回1死一、二塁から代打・小窪に四球を与えた後、阪神・能見は左足ふくらはぎがつったため、降板。試合後、完投を狙っていたことを明かし、無念そうに言葉をつないだ。

 「昨日、ブルペン(リリーフ投手)も使っていたのは知っていたし、何とか最後(9回)までと思っていたけど」

 前日、チームは5時間13分の死闘を繰り広げ、ベンチ入りしていた投手をすべてつぎこんだ。1人でも中継ぎ陣を休ませたい-。虎投の大黒柱として使命感を持ってマウンドへ向かった。

 立ち上がりからテンポの良い投球で凡打の山を築かせた。140キロ台中盤の直球にスライダー、フォーク、チェンジアップを織り交ぜ7回まで梵のソロによる1失点に封じていた。完投が見えた矢先のアクシデントは、すべてを出し切った“証”とも言える。高宮、福原、呉昇桓(オ・スンファン)のリリーフをあおいだが、先発の役割を十分に果たして5勝目を手にした。

 「(渡辺さんのことは)知っていたし、勝てて良かった」

 4年前の6月28日、富山遠征中に、チーフスコアラーを務めていた渡辺長助氏が宿舎で心筋梗塞で死去。悲しい記憶がフラッシュバックする富山のマウンドでは、13年6月25日の中日戦での8回1/31失点に続く快投。スコアラーとして多くの白星をアシストしてくれた恩人へ、再び感謝の思いを体現してみせた。

 「走る男」が、走らない-。36歳を迎えたベテランの域に入った左腕は1年間を戦い抜くために、計算し尽くされた日々を送る。シーズン中も走り込みを通常メニューに加えるが、涼しいはずのドーム球場では意図的にランニング量を抑える。屋内球場は人工芝が下半身に負担がかかり、故障するリスクを減らすためだという。

 「どれだけ練習をしてもケガをしたら一緒。チームに迷惑をかけるし、人工芝では走り込みは控えているね」

 猛虎を首位へ押し上げる7回1/3、2失点の力投に「良かったです」と笑った。チームも、自身も、波に乗れる意義ある1勝だった。

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