楽天の挑戦 球界初の中学生下部組織 野球人口拡大につなげる

[ 2015年6月16日 09:00 ]

中浜監督の指導を聞くナイン

 プロ野球の楽天が運営する、中学生の硬式野球チーム「東北楽天リトルシニア」が20日、初の公式戦となる「第39回日本リトルシニア野球選手権東北大会」に出場する。チームは今年1月に発足。プロ野球球団が中学生年代のジュニアチームを保有して、運営するのは初の試みだ。東北の地で野球の競技人口拡大やプロ、アマの積極的な交流を図る楽天の新たな挑戦に迫った。

 平日の夜。コボスタ宮城の照明の下で汗を流していたのは楽天ナインではなく、まだ体の線が細い中学生だった。

 昨年12月から2度のセレクションを経て100人から20人に絞られた1期生は、楽天2軍施設の泉練習場などで週4日の練習を重ねてきた。地元の選手を集める既存のリトルシニアとは違い、宮城だけでなく福島、山形の選手もいるが、吉原瑠人主将(13)が「練習では全員一回は会話するように心掛けている」と話すように積極的なコミュニケーションでチームの団結を図っている。

 「東北楽天リトルシニア」は今年1月に発足した。サッカーはJリーグなどユースチームといった下部組織を持つのが当たり前だが、プロ野球では例にない。チーム設立の発案者である球団スクール部の相田健太郎部長は自身がサッカー経験者だったこともあり「子供が野球をやる上で目標にできる場所」として球団にチームの設立を提案、実現させた。

 ただ、有望選手が在籍してもドラフト制度がある以上、青田買いはもちろんできない。ならば球団がユースチームを持つメリットはどこにあるのか。「プロの組織に子供が触れることで、プロ野球好きから野球好きになり、競技人口の拡大につながる」と相田部長はチームの利益よりも球界の未来を考える。選手全員がプロ野球選手になれるわけでない。そのうえで元楽天1軍打撃コーチの広橋公寿総監督も「野球を通した人間力の育成をしたい。社会人になって必要な人間力を養ってもらいたい」とチームの目的を口にした。

 プロの球団がアマチュアチームを持つことで、アマ側が何を求めているのか、必要なのかを身近に感じるメリットもあるという。「プロが入ることによって良い結果が生まれるならチャレンジしたい」と相田部長。球界初の試みで先駆者として結果を残せば、モデルケースとして今後、他球団も同様のチームを持つことも考えられる。

 「東北の野球のレベルが向上すれば意味がある。一人でもプロ野球選手として戻ってきてくれたらうれしい」と相田部長は願う。5年後、10年後、選手たちがどのような野球人生を歩むのか。初陣は今月20日。野球界に新たな歴史の一ページがめくられる。

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