捕手ならではの読み 投手心理を巧みに突いた細川のバスター

[ 2011年11月18日 11:18 ]

<中・ソ>バントの構えを見せて失投を引き出した細川

日本シリーズ第5戦 ソフトバンク5-0中日

(11月17日 ナゴヤD)
 細川のバスターがシリーズの大きな流れを引き寄せた。ソフトバンクが王手をかけた日本シリーズ第5戦。スポニチ本紙評論家の槙原寛己氏(48)は、7回に貴重な2点目を叩き出したソフトバンク・細川のバスターが最大の勝因と指摘。投手心理を巧みに突いて失投を引き出した細川の戦略の勝利と分析した。

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 こういう追加点が欲しかったはずだ。初回の1点以降、中日・チェンの前にゼロ行進。重いムードの中で迎えた7回に細川のアイデアが、つながらない打線の呪縛を解き放った。秋山監督には予感のあった意外性の一打だったかもしれない。

 場面は1死一、二塁で打順は8番・細川。9番の投手の山田に代打・カブレラを用意していたとしても送りバントは考えづらいところだ。実際にサインは「打て」。そこで細川は1球目、2球目とバントの構えを見せる。この構えで「もしかしたらバント?」と相手バッテリーに考えさせた。

 バントに来るなら2アウト目を取るためにも、やらせたくなるのが投手心理。2球続けてボールになり、次はストライクを取らなければいけない。再びバントの構えを見て、チェンの3球目は真ん中へ置きに来たような143キロの直球。巧みに引き出した絶好球を、細川はバスターから見事なセンター返しで中前へ運んだ。

 西武時代、打率2割そこそこしか打てていないときに細川はよくこのバスターの構えから打っていた。試合前、ちょうど秋山監督とそんな話をしたが、もともと打撃は期待されていない打者で、おそらく中日も細川のバスターは想定外。シリーズは中心打者の対策はビデオがすり切れるほど見たりするものだが、ほぼノーマークのはずだ。打てなくてもともと、の考え方と相まって思い切ったことをできたのだ。

 対して中日・谷繁は後半戦に打撃好調で、打てない打線の中で期待されていた。その期待が本来の思い切った打撃を消してしまいシリーズ無安打の大不振。両捕手ともにリードはさえているけど、打撃では完全に明暗が分かれた格好だ。

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2011年11月18日のニュース