「あぶさん」引退もモデルは健在ナリ

[ 2009年10月8日 10:35 ]

佐賀市内で居酒屋「あぶさん」を営む永渕洋三さん

 水島新司さん(70)の人気野球漫画「あぶさん」の主人公が、62歳で今月引退したが、そのモデルとなった元プロ野球選手が佐賀市内で営む焼き鳥店は健在だ。

68年4月16日 代打でプロ初本塁打の後はリリーフ登板した“あぶさん”

 酒豪の強打者あぶさんこと景浦安武選手のモデルは、近鉄バファローズと日本ハムに在籍した永渕洋三さん(67)。1979年に引退後、郷里の佐賀へ戻り、妻と二人で30年近く居酒屋「あぶさん」を営んできた。
 飲み過ぎでつくった借金を、球団との契約金で返済。二日酔いのまま出場し、外野の守備中に嘔吐。バッターボックスに入った途端、相手チームの捕手から「酒のにおいが残ってますよ」と言われたことも…。
 数々の伝説を残した永渕さんに、一目会いたいと客が訪れる店内には、ラベルに「あぶさん」と書かれた焼酎瓶がどんと置かれている。
 5日発売の「ビッグコミックオリジナル」(小学館)誌上で、景浦はユニホームを脱いだ。永渕さんに感想を尋ねると「知り合いにもらった漫画を店にも置いてあるけど、一度も読んだことがない。そりゃ引退するでしょ、漫画とはいえ62歳じゃ格好つかないし」と、身もふたもない返事。
 型破りのキャラクターは、漫画にひけを取らない。現役時代、球場で水島さんに会い「実はモデルでした」と打ち明けられた時も、ひとごとのように感じたという。
 「もう毎晩飲んでいた。打っても飲むし、打たなくても飲む。勝っても飲むし、負けても飲む。20代のころは一晩に日本酒を一升ぐらい」
 しかし、ただの酔っぱらいではない。「若かったから試合前の練習でアルコールは抜けたし、目の色を変えてプレーした。結果的に二日酔いの時の方が、ようヒットが出とった」。入団2年目の69年には、後に通算3000安打を達成した張本勲選手と同率で、首位打者に輝いた。
 もともと投手として近鉄に入団したが、1年目の初めのころは、当時の三原脩監督の意表を突く采配「三原マジック」のもと、投手・外野手・代打の“1人3役”をこなした。
 「三原監督には先見の明があった」と振り返る。入団3年目のある日、できるだけ庭の広い家を買えと勧められ、大阪府八尾市に自宅を購入。その後のバブルで、地価は約7倍に跳ね上がった。
 「大阪から引き揚げる時に家を売り、この焼き鳥屋の開業資金に充てたんです」。あの時の“采配”に、今も感謝しているという。そして「あぶさん引退の回だけは読んでみようと思います」と語った。

続きを表示

2009年10月8日のニュース