カナダに大苦戦…成瀬ニッポン“救い投げ”

[ 2008年8月19日 06:00 ]

4回2死二、三塁のピンチを切り抜け、ガッツポーズの成瀬

 【北京五輪・野球 日本1―0カナダ】成瀬が崖っ縁の星野ジャパンを救った。予選リーグ2勝2敗の日本代表は18日、ウーケソン第2球場でカナダと対戦。負ければ予選敗退が色濃くなる一戦で、先発の成瀬善久投手(22)が7回をわずか2安打10奪三振の快投を演じた。継投策も完ぺきに決まり、5回に稲葉篤紀外野手(36)が放った右中間ソロによる1点を死守。3勝2敗で予選突破に王手をかけ、19日の中国戦に勝てば4位以内が確定する。

 夏の太陽を浴びて左腕がしなる。これこそ“招き猫”の本領。カナダ打線のバットが面白いように空を切る。成瀬が崖っ縁のマウンドでさんぜんと輝いた。
 「左打者がずらっと並んでたんで、一発だけ警戒した。投げ間違わなければ大丈夫と思ってました。自信を持って自分らしく投げられた」
 負ければ3敗目。米国との最終戦を残す日本にとって、絶対に負けられない一戦だった。スタメンに8番・ロビンソン以外左打者が8人。「序盤に外のボールのスライダーを振ってくれるのが分かった」。外に広い国際審判の特徴も利用し、得意のチェンジアップを少なめにして直球とスライダーを外角に集中。22歳の左腕が立ち上がりから威力を発揮した。
 唯一のピンチは4回だった。1死から連打を許して二、三塁。ここで4番・ソーマン、さらに今大会打率トップのウェグラーズを連続空振り三振に仕留めた。絶妙の制球と配球。ロッテでバッテリーを組む里崎も「今季一番のベストピッチ」とうなるほどだった。6回の投球を見た星野監督から「もう1イニング行け」と送り出された7回も3者凡退。7回を2安打10奪三振に「僕は落ちるとこまで落ちたから。上がるしかないと思っていた」としみじみ話した。
 北京では先発はできないかもしれなかった。昨年12月のアジア予選(台湾)の韓国戦で先発に抜てきされた左腕も今季は不調。合宿集合日の球宴第2戦(1日)は球宴ワースト8失点で自信を失った。星野監督は「このままじゃ敗戦処理や。合宿で徹底的に走れ」と指令。炎天下のジャイアンツ球場で走り込んだ。下半身を使う意識を高めて体の開きを抑え、左腕が頭の近くを通って出てくるように修正。「頭を使えッ」とも怒られ、打者から球の出どころが見えにくい“招き猫投法”が北京でよみがえった。
 13日のキューバ戦ではダルビッシュを救援した直後、カウント2―0と追い込みながら勝負を急いで決勝打。「悔いが残る。次は抑えてやろうと思った」。その言葉にウソはなかった。崖っ縁の快投。「あー、オレを殺す気か」と1―0勝利に安どした星野監督はこう続けた。「成瀬が見事に期待に応えてくれた。あとは中国戦をしっかり戦います。緩めずにね」
 中国戦に勝てば予選突破。成瀬の左腕が準決勝へ道を切り開いた。

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2008年8月19日のニュース