最終回 人間力を兼ね備えた選手育てたい

[ 2008年8月19日 06:00 ]

メジャーへ行っても、試合終了後、グラウンドに一礼して引き揚げる桑田

 たくさんの人に出会った僕の野球人生。その中でもキヨとの出会いは天命であり、宿命、使命、運命的だった。帰国後、直接会って「ありがとう」と伝えた。神戸で2人きりで中華を食べ、引退のお祝いにキヨが選んでくれたシャンパンやワインを飲んでいろいろ話をした。僕の引退には「お前らしい、いいやめ方だ」と言ってくれた。キヨは僕の引退を聞いて、3日ほど練習を休んだらしい。「ぽっかり穴が開いたような気がした。結局、お互い刺激し合って頑張っていたんだなあ。よく分かったよ」って…。

 プロ入り後、僕とキヨの距離は遠くなった。でも巨人で一緒にプレーするようになって、すごい距離があったのが半分ぐらいまでグッと縮まった感じがした。PL学園時代のように、本当に打ち解け合えるのはお互いが引退した時だと思っていたけど…。もう、そこまで来ているね。キヨの笑顔を見てそう思ったよ。
 そしてこれからの野球人生。僕は野球によって人間力を磨くために生まれてきた男。今後は1人でも多く、人間力を兼ね備えた選手を育てたい。よく質問されるけど、巨人の監督はあくまで選ばれるものであって…。もちろんそうなればベストだと思っているし、それだけの実力を付けたい。でももっと大きな意味で、日本の野球界に貢献したいと考えているんだ。
 04年にチームをつくって、今も小中学生を指導、勉強させてもらっている。将来、もし機会があれば高校生も指導したいね。体も心も大きく成長する中学、高校の6年間が、将来の日本野球界を左右する大切な時期。だからこそ、指導する側も力量が必要。素晴らしい指導者もいるだろう。でも、お世辞にもそうとは言えない指導者が多い現状は無念でしかたがない。
 23年間、声援を送っていただいたファンの皆さんには心からお礼を言いたいです。僕自身、何一つ悔いはない。本当に充実した現役生活だった。いろんなことがあったけどすべてが経験。そして今につながる。PL学園の中村監督に教えていただいた言葉「球道即人道」。まさしくその通りだったな、と思う。
 選手である桑田真澄は「卒業」しました。でも、野球の修行はまだまだこれから。指導者として経験を積み、今までたくさんの幸せを与えてくれた野球界に恩返しをしたい。野球の神様、ありがとう――。感謝の思いを胸に、これからも野球を愛し、生きていきたい。<紙面掲載 2008年5月3日>

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2008年8月19日のニュース