村上 種目別床で笑顔あふれた銅!リオ五輪以降の涙を糧に「人生で一番の演技。自分で金メダルあげたい」

[ 2021年8月3日 05:30 ]

東京五輪第11日 体操女子種目別 ( 2021年8月2日    有明体操競技場 )

体操女子種目別床運動で銅メダルを獲得した村上
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 種目別決勝の女子床運動で、村上茉愛(24=日体ク)が、体操ニッポンの歴史に名を刻んだ。H難度「シリバス」を決めるなど完璧な演技で14・166点をマークし、銅メダルを獲得。日本女子の表彰台は64年東京大会の団体総合銅メダル以来で、個人としては初。今大会の団体総合、個人総合はともに5位だったが、ついに輝く勲章を手に入れた。

 演技を終える前から、もう笑みがこぼれていた。後方屈身2回宙返りを決めた村上が、笑ってフィニッシュに向かう。「1分半が終わってほしくないくらい楽しくて、自然と笑顔が出た」。7月25日の予選はギリギリの8位通過だったが、一発勝負の決勝で逆襲。ラストに伸ばした右手には、メダルに届いた確かな手応えが残った。

 「これ以上はできないってくらい、凄くいい試合ができた。体操人生の中で、一番の演技ができた。自分で金メダルをあげたい」

 H難度「シリバス」を完璧に決めて波に乗った。日体大在学中から審判講習を受け、減点項目などを確認。メルニコワとは、難度を示すDスコアも出来栄えのEスコアも同点だった。丁寧に舞ったからこそ立てた、日本女子の個人初となる表彰台。男子が目立つ体操ニッポンで、24歳が意地を見せた。

 「歴史を塗り替えられる人になれて、光栄。女子も注目してもらいたいと思ってやってきた。少しアピールできたんじゃないかな」

 東京五輪を目指すきっかけになった団体総合4位の16年リオからの5年は、笑顔と涙が交錯する競技人生を送った。17年世界選手権の床運動で日本女子で63年ぶりの世界一に。18年世界選手権でも個人総合で銀メダルを獲得した。

 迎えた充実期は19年に暗転する。腰を痛めて世界選手権の代表に入れず。新型コロナによる五輪の1年延期も心身の負担になった。インスタグラムに届く心ない書き込みにも心を痛めた。悔しくて泣いた。悲しくて泣いた。そして、この日はうれしくて楽しくて、笑って泣いた。

 「リオが終わってから今日まで、涙を尽くしたってくらい泣いてきた。悔し涙はもう流したくない。とにかく笑おうと思っていた」

 5日に25歳になる。女子ではベテランの域に達し、24年パリ五輪はイメージできない。万感の思いを込めた、TOKYOの90秒だった。「次の五輪、その次の五輪とかは、若い子に受け継いでいってほしいなと思う。一番いい演技ができて、今日は集大成ってはっきり言えるのかな」。輝く勲章をいとおしそうに見つめ、女子のエースは誇らしく笑った。

 【村上 茉愛(むらかみ・まい)】

 ☆生まれとサイズ 1996年(平8)8月5日生まれ、東京都出身の24歳。1メートル48、48キロ。

 ☆競技歴 3歳で体操を始め、池谷幸雄体操倶楽部から日体大、現在は日体ク所属。

 ☆主な実績 初出場した13年世界選手権で種目別床運動4位。16年リオ五輪は団体総合4位で、17年世界選手権の種目別床運動で金メダル。18年世界選手権は個人総合で銀メダル。

 ☆愛称 17年世界選手権の帰国会見で「“ゴムまり娘”と呼んでください」とアピール。

 ☆子役 約600人のオーディションを勝ち抜き、9歳の時にTBS系のテレビドラマ「ウメ子」に出演した。

 ☆憧れの人 レスリング女子で五輪3連覇の吉田沙保里さん。

 ☆音楽 試合の前にはK―POPを聴く。最近のお気に入りはBTS。

 ▽64年東京五輪体操女子団体総合の銅メダル 自国開催の団体総合に池田敬子、相原俊子、小野清子、中村多仁子、辻宏子、千葉吟子の6人が出場。規定された演技を行う前半で日本は4位。後半の自由問題でドイツを逆転し、ソ連、チェコスロバキアに続く3位に入り、日本女子体操で初めてのメダルを獲得した。

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