稀勢43場所ぶり日本人V懸け14日目に白鵬と全勝対決

[ 2013年5月25日 06:00 ]

白鵬(左)が見つめる中、全勝をキープした稀勢の里

大相撲夏場所13日目

(5月24日 両国国技館)
 稀勢の里(26=鳴戸部屋)が大関・鶴竜(27=井筒部屋)を力強い寄りで一蹴し、初日から無傷の13連勝。同じく全勝の横綱・白鵬(28=宮城野部屋)も無敗を守り、優勝争いは両者に絞られた。14日目には全勝同士で激突。06年初場所の大関・栃東以来43場所ぶりの日本出身力士優勝を狙う未完の大器が、人生を懸けた大一番に臨む。

 満員の館内の声援に呼応するように稀勢の里が力強く体を躍動させる。左四つにロックされた鶴竜はズルズルと後退。土俵際でほしかった右上手に手がかかると、体を預けるように前に出した。会心の寄り切りで13連勝。拍手喝采、地鳴りのような歓声の中でも表情を引き締め、勝ち残りの東の控えに座った。

 日本出身力士の初日から13連勝は04年春場所の千代大海(優勝は朝青龍)以来9年ぶり。結びの白鵬に力水をつけ、ライバルが全勝を守った一番を見届けると「体は動いています。一日一日の積み重ね」。前日までの笑みは消え、淡々と相撲を振り返った。

 1年前の千秋楽。勝てば優勝決定戦に進める把瑠都戦に敗れ、多くのファンの期待を裏切った。両親は「目立たないように」と国技館最上段で観戦。鳴戸部屋に送り出して以来「血のつながりはあるが気持ちは見ている人と同じ、ただのファン」という父・萩原貞彦さん(67)は「あの時は何も思わなかった」と淡泊だ。それでも、今回ばかりは「あした(14日目)勝ったら千秋楽に国技館に行くが、負けたら行かない」と息子の心境を受け止めた。

 先代師匠(元横綱・隆の里、故人)の方針で禁止していた他の部屋への出稽古を場所前に解禁。立ち合いも先場所より体を丸めて立つスタイルに変更するなど自分なりに試行錯誤してきた。だが、その成果の13連勝と見られるのは嫌だ。「工夫だけじゃない。場所前だけじゃない。ここまで(相撲界に)入ってやってきた」。02年の入門から積み上げた稽古の結実だと強調する。

 さあ、白鵬との全勝決戦。過去8勝30敗で最近1年は全敗と分は悪いが、北の湖理事長(元横綱)は「懐の深さは白鵬が上。まわしを取らせなかったら(稀勢の里にも)可能性がある」と予測する。43場所ぶりの日本出身力士の優勝へ。千載一遇のチャンスを前に、未完の大器は「自分を信じてやるだけ」と短い言葉で決意表明した。この瞬間をどれだけ待ち焦がれたことか。ベタなフレーズだが、あえて言わせてもらう。いつやるか、今でしょ!

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